かたづの!
かたづの! / 感想・レビュー
ヴェネツィア
中島京子が初めて挑んだ歴史小説。物語の舞台に選ばれたのは南部領の八戸と遠野。どこまで史実が踏まえられているのかは定かではないが、主人公の生涯の基本的な枠組みは史実に立脚しているのではないかと思われる。タイトルの片角の伝承はどうだろうか。これ自体が既にフィクションであるような気もするが。一人の女性が数奇な運命に翻弄されてはからずも送らねばならなかった波瀾万丈の物語。小説のスタイルもこれまでとは随分違っている。資料を鋭意収集し、十分な意気込みを持って書かれたのだろう。ただ、これが中島京子の本領を発揮⇒
2022/04/09
yoshida
江戸時代初期、八戸を拠点とする根城南部氏の盛衰を描く歴史ファンタジー。夫と嫡男の急逝で祢々は根城南部氏の女当主となる。南部宗家から降りかかる難題に対し、武力によらず知恵で対抗し家名を存続させる。時代の背景として、徳川の治世になっていた事が大きいだろう。下手に御家騒動になれば取潰しの恐れあり。戦国の世と違い武力に物言わせることも出来ない。根城南部氏が存続した現実的な背景と思う。遠野物語にあるような河童を登場させたりという着想は素直に楽しめた。後半はやや冗長と感じてしまう。私は中島京子さんは現代物が好みかな。
2018/10/18
starbro
2014「王様のブランチ」ブックアワード大賞受賞作ということもあり、期待して読みました。最初は歴史小説いや歴史ファンタジーという感じでしたが、河童や大蛇等々の登場もあり、これは中島京子版「遠野物語」なんだという結論に至りました。好き嫌いもあるとは思いますが、私は流石、直木賞作家の新境地の意欲作という評価で2014年のBEST10に早速追加(但し、派手さはないので決して上位ではありませんが・・・)いたします。
2015/01/13
ナイスネイチャ
図書館本。実在した女大名の話だけでなく羚羊からの視点。かたづの→片角→一角獣なんですね。歴史小説なんですがかなり変わった雰囲気を醸し出した作品でした。
2015/07/20
hiro
中島京子さん初の歴史小説は、実在した‘女大名’が主人公ということで、この本を読んでみることにした。戦国の世から江戸時代に変わった直後、まだ戦から遠ざかっていない時代なので、どんなに勇ましい女武者かと思っていた。しかし、この女大名清心尼は、八戸から遠野への国替えなど数々の南部藩主利直の策略に対しても、武力ではなく、戦うことを避けて見事に家を守っていく。この考え方は、十分今の世にも通じる。また遠野らしく河童、大蛇も登場し、語り手は、かもしかの一本角「かたづの」というファンタジー仕立ての歴史小説でもある。
2016/02/20
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