砂の王宮
砂の王宮 / 感想・レビュー
utinopoti27
本作は、戦後の闇屋から身を起こし、己の信念と才覚で現代の流通王となった塙太吉の立志伝です。ちなみにモデルはダイエーの中内功だとか。優秀な側近とともに野望実現に向けて邁進する主人公ですが、反対運動、黒い勢力の介入、側近の裏切りと、様々な試練が襲いかかります。そして血なまぐさい事件が・・。後半は愛人との子が巻き込まれた痴漢冤罪事件によって、思わぬ展開に。長編ながら、スピーディなシナリオで、読み手を飽きさせません。肝心の事件を含め、収束がやや中途半端に終わったのは残念ながら、滅びのカタルシス漂う良作でした。
2018/07/14
それいゆ
楡周平さんの作品は3冊目ですが、これが最高傑作です。経済小説というよりも、百田尚樹「海賊とよばれた男」、宮本輝「流転の海」を読んでいるような錯覚に陥りました。ダイエーの栄華盛衰物語なんですが、それだけにとどまらず途中で大きな伏線が設定されており、冤罪、痴漢事件、DNA鑑定へと繋がり、展開を面白くしています。ダイエーだけでなく三洋電機、ソニー、シャープ、東芝などがつまずいている昨今、企業業績持続の困難さを実感させられました。
2015/09/01
あすなろ
僕がこの手の経済小説を読むと必ず思ってしまうのは2点。まずは、やはり運は大事だと思う。否、運を見極めて乗る度胸か。次に、どうしても謂わば成り上がるためダーティな部分があること。そんな例に違わない、スーパーを日本一に押し上げる闇商売から叩き上げた男の一生。ダイエーの中内氏を範にしていることは否定出来ない。しかし結論めいているが、老いてなおカリスマたろうとする男の姿は、シニカルな第三者の目で見つめてしまう。楡氏は最近、閨閥や血脈にスポットを当てることが多いが、後継者を定められない悲惨さといったらない。
2015/08/02
Satomi
戦後の闇市から一代で大手スパーチェーンを築いた男の経済小説。成功者は絶対にチャンスを逃さない。欲しいものは手に入れる。要所要所で出会う人々との縁、その繋がりの奥深さ。運を生かすも殺すの自分次第。計画書も見積りもない話を即決出来る度胸。スケールの違いを思い知らせる。やり残した事は、己の存在が大きすぎて、自分を越える人が現れない、後継者がいないという事。無念だったであろう。
2017/11/06
starbro
楡周平は「Cの福音」以来コンスタントに読んでいる作家です。最初はダイエーの創業者故中内氏をモデルにした単なる経済小説かと思って読み進めましたが、ミステリ的な要素もあり、450P一気読みしました。流通業界で栄華を極めても、時代を見誤ったり、後継者に恵まれないとタイトルの如く崩れてしまうものだなぁと実感しました。因みに現在好調なららぽーと等の商業施設にはダイエーOBがゴロゴロしています。本書でも触れられているリニアモーターカーの利権は誰のためのものでしょうか?国民の利益は誰も考えていないと思いますが・・・
2015/07/16
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