神奈備
神奈備 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
長編小説だが、登場人物は潤と孝(+潤の母親)だけ。それでこのページ数を書き上げるのだから、筆力はあるのだろう。しかも、緊張感もなんとか最後まで持続させている。エンディングは孝の希望通りになるか、それともこのようになるかのどちらかしかなかっただろう。この二者択一なら、やはりこちらか。一方、御嶽に神の存在を信じる(信じたい、もしくは信じるしかない)潤と、無神論者の孝といった二元論的な対立は、葛藤と緊張をささえるが、逆に言えば単純化をも生み出してしまいかねないだろう。
2024/08/21
初美マリン
木曽の御嶽は、信仰の山だった。神に自分の存在意味を問うために無謀な登山をする少年。すべてを許せば楽になると微笑んでいた。神は信じるものに存在する。次々と試練が続き、ハラハラ、幸せになってほしかった
2020/07/27
starbro
馳星周は、ほとんどの作品を読んでいる作家です。最近、著者ならではのシリアスなノワールが少ないのはどうしてでしょうか?本作も新境地の山岳小説です。私は登山も山岳信仰もやりませんが、著者の筆力で一気読みでした。但し、潤は生かしてくれても良かったんではないでしょうか?大相撲で御嶽海(みたけうみ)という力士がいますが、極めて神性の高い四股名だということが解りました。
2016/06/28
まちゃ
母親の愛情を受けずに育ち、神を求めるしかなかった少年・潤と御嶽で強力をしながらも神を信じぬ孝。大自然に翻弄されながら自分の生きる意味を求めて葛藤する潤と孝の心理描写はさすがでした。人間を寄せ付けない御嶽の大自然の猛威と人間を惹き付けてやまない御嶽の神々しい姿の対比に惹き付けられました。エンターテインメント性は低いですが生きることについて考えさせられる小説でした。
2016/09/04
pukupuku
久々の馳さん。救いのない話だった。ただただ救いのない話が延々と続き,希望を見いだしたくて先を急いで一気に読んだ。それなのに・・・やっぱり救いがなかった。なんだか私が思い描いていた馳さんの文章とは体裁が変わってしまったような気がして,重い話なのに,一つ一つの文章や一人一人の人物像がすごく軽く感じて,どよ~んとした読後感。
2016/11/11
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