慈雨
慈雨 / 感想・レビュー
starbro
「孤狼の血」に続いて、柚月裕子2作目です。地味で渋い内容ですが、本の雑誌2016年1位だけあって、330P強一気読みです。タイトルと内容の相性もバッチリでした。主人公がストイック過ぎるような気もしますが、刑事には正義感が強く、事件解決を最優先とする方々ばかりであることを願います。私には過去の贖罪はないので、四国八十八ヶ所の巡礼の旅には出なくて良さそうです。
2016/12/29
ウッディ
定年退職し、妻と二人で四国八十八ヶ所霊場巡りに出た元刑事の神場。彼にはかつて担当した捜査での後悔があった。そんな折、かつての部下で娘の恋人でもある緒方から、管内で幼女殺害事件があったとの連絡が入る。40年余りの警察官人生を振り返る旅、支えてくれた妻への感謝の気持ち、娘幸知の出生の秘密と二人の娘への想いと、平行して進む事件捜査、とても上手い構成で、今回も柚月さんに泣かされました。鶴さんの「晴れと雨の日が同じぐらいがちょうどええ」という言葉も印象的で、タイトルどおり心にしみる物語で、と~っても面白かったです。
2018/08/21
鉄之助
連続幼女殺害事件(「足利事件」など)を下敷きにしたフィクション。同じ事件を扱ったノンフィクション作品の『殺人犯はそこにいる』(清水 潔)、に続けて読んだ。全く違う色合いだったが、それぞれに面白かった。重荷を背負ってお遍路を続ける主人公の、設定がうまく効いていた。
2024/09/22
サム・ミイラ
題材は横山秀夫的でありながらやはり柚月裕子にしか書けない話だと思う。十六年前の冤罪隠蔽の記憶。新たに発生した少女暴行殺人事件を機に輪廻の歯車は再び動き出す。柚月裕子は四国八十八か所巡礼の道程を並行して描く。妻と娘、また同僚達への想いとそして旅の途中の様々な人々との出会いによりあるひとつの覚悟を固めていく。それは刑事として、いやその前に人としての矜持。ただ後半は捜査が主となり通常のミステリーと化してしまった事が惜しまれる。この比重が逆であったならば、推理小説を超えたまさに慈雨の如き作品になっていたと思う。
2017/06/28
ミカママ
ああ、これは例の一連の事件と冤罪がモチーフなのかなと。ならばどうして、群馬と名指しておきながら、架空の地名を使用したのか。いっそのこと横山秀夫さんみたいに、G県とでもしてくれればよかったのに。過去の冤罪事件を縦糸に、退職した刑事が抱える良心の呵責や彼の家族、そして新たに起きた幼女誘拐殺人事件が幾重にもよりあわさって物語は進む。主人公がお遍路途中で出会った人びとの人生譚に心が動かされた。読み終わってタイトルの秀逸さにも。
2017/04/06
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