塞王の楯
塞王の楯 / 感想・レビュー
starbro
明日の直木賞発表前に、ギリギリ第166回直木賞候補作5/5コンプリートしました。今村 翔吾、3作目です。書き尽くされている時代設定ではありますが、ブラタモリ的歴史小説、発想が新鮮でした。帯に書かれている単純に矛盾的な話ではなく、核の抑止力的な発想です。 明日の直木賞受賞十分可能性ありだと思います。 https://lp.shueisha.co.jp/tatexhoko/
2022/01/18
しんごろ
戦国時代で戦い抜いた者は武士だけではない。表舞台に立つことはないが、そこには職人による戦いがあった。石工の穴太衆。鉄砲職人の国友衆。石工の匡介達が、鉄砲職人の彦九郎達が、京極高次が城主の大津城を舞台に、世から戦を無くすために、己が信じる物を貫き通すために、攻める。守る。撃つ。凌ぐ。決して交えることはないが何度も戦ってるうちに互いに認めあう。もはや邂逅だ。今村翔吾が描く漢達は、あきらめることを知らず、なんて気高いのだ。そして、漢達を支える女性陣は、なんと凛々しいことか。今村翔吾作品に、またもや感動を覚えた。
2022/01/27
パトラッシュ
日本史上の一大イベントたる関ヶ原の合戦に比べ、その前哨戦とされる大津城の戦いは教科書にも載らないほど注目度が低い。その地味な舞台で石垣造りのプロの穴太衆飛田屋と、鉄砲職人集団の国友衆の技術者としての意地とプライドが衝突するのだ。双方の頭領である匡介と彦九郎は共にいくさで親を亡くしており、彼らが生み出した絶対に破られない楯と強力極まりない大砲がぶつかるシーンの連続は凄まじい。無能な蛍大名と嘲られていた京極高次の意外なリーダーぶりと匡介の密かな慕情が物語に彩りを添えており、読み応え十分な戦国絵巻を堪能できる。
2021/11/26
海猫
これまた分厚い単行本なので、読む前はちょっと怯んだ。が、読み始めたら物語に乗せられ、ぐいぐい読める。石垣造りのことなど、全く興味がなかったのに、ディテールの描き込みが素晴らしく、どんどん引き込まれる。主人公の匡介が石垣職人として成長していく様も面白く、師弟ドラマの側面も強い。後半の大津城の攻防戦が、圧巻。「絶対に破られない石垣」と「どんな城も落とす砲」の対決は、どちらが勝つのか?描写に臨場感があり、圧倒的な迫力。このような職人の立場から見た合戦シーンは初めてで、新鮮だった。登場人物それぞれの想いが、熱い。
2021/11/07
青乃108号
俺は歴史に疎いものだから、時代小説は滅多に読まないのだが、この本だけは「読め」と俺に厳に言ってくるのだ。あたかも塞王に「俺を使え」と語りかける石のように。武将の名など皆目覚えられぬし大戦が始まろうとしているのだが、そんな事はどうでも良く、大津城を舞台に繰り広げられる後半の、塞王の盾すなわち石垣と大筒の攻防、撃たれて崩れても積み直しまた撃たれては積み直し、ひりつく様な場面の連続に引きずり込まれ読むのを止められない。この対決、どちらが勝つのか。そして物語の結末は。さすがの直木賞受賞作。おれは心から感動した。
2024/08/05
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