その扉をたたく音
その扉をたたく音 / 感想・レビュー
さてさて
『俺だけが真ん中にいた世界は、もう終わったんだ』と顔を上げる宮路。そんな宮路が、人が関わり合いを持つ社会の存在を意識し出す様を見るこの作品。それは、『自分以外の人を愛することがどんなことなのか。自分以外の人と時間を共にすることが何をもたらすのか』という人と人との関わりが人生の中で大きな意味を持つかを教えてくれた物語でした。いつもながらに、ふわっと描かれる作品世界の中に、深い奥行きを感じさせてくれるこの作品。読後感が保証された瀬尾さんならではの優しい世界観に包まれた、人の心のぬくもりが感じられる作品でした。
2021/07/28
うっちー
私は宮路タイプ、渡部さんはめちゃくちゃ強い人。
2021/03/21
ウッディ
ミュージシャンを目指しながらも、覚悟もなく、親からの仕送りでダラダラした生活を送る29歳の宮路は、演奏で訪れた老人ホームで、介護士の渡部のサックスに魅了され、なりゆきで水木のばあさんの使い走りとなる。楽天的で自分勝手な宮路に、最初は反感を覚えながらも、優しく真面目で、なにより寂しがり屋の彼が愛おしくなってくる。「ぼんくら」と言い放題だった水木のばあさんの本心を記した手紙、特に大事にしていたハンドタオルの話にウルウル。太田君に続き、渡部君のその後も知ることができ、お得感のある一冊でした。
2021/08/28
zero1
小説が【小さな奇跡】なら。瀬尾作品はまさに奇跡の代表格。神はいる。すぐ近くにいる。そして神が放つ起爆剤は人を再生する。モラトリアムは必要かもしれないがいつか終わる。「あと少し、もう少し」のスピンオフ。中学時代、助っ人で駅伝を走った渡部は25歳。老人ホームの職員に。彼のサックスに心が動いた【ぼんくら】宮路は29歳にもなって親の仕送りで生活。人と人との化学変化を軽く描くが別れもある。別れは喪うだけではない。未来に希望を残す。あなたにその音は聞こえる?名言多数(後述)。勝負しろよ渡部!
2023/01/19
bunmei
それぞれの生活の中で、一歩を踏み出せない時、人生の岐路に立った時に、人と人との関りを通して、そっと後押しをしてくれる内容の瀬尾作品。今回は、アラサーで親の仕送りを頼りに、定職にも就かず音楽への夢を捨てきれず、ブラブラしている男・宮路が、新たな扉を開いていく物語。その舞台となるのが、老人の介護施設。そこで知り合った、老人達と素敵なサックスの音色を奏でる介護士の青年・渡部との交流を通して、これまで自分では気づかなかった、新たな自分を発見する。と共に、満たされなかった心の隙間を、温かな充実感で埋めていく。
2021/06/04
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