剛心
剛心 / 感想・レビュー
starbro
木内 昇は、新作中心に読んでいる作家です。辰野 金吾は知っていましたが、明治の三大建築家の一人 妻木 頼黄(よりなか)の存在を本書で初めて知りました。明治の近代建築ラッシュの時代を駆け抜けた主人公の清々しさを感じました。国会議事堂を造れなかったのは、無念だったでしょうね。霞が関周辺の建物や日本橋には、仕事で接点があるので親近感が湧きました。 https://www.bungei.shueisha.co.jp/interview/goushin/
2021/12/22
いつでも母さん
妻木頼黄という建築家が居たという事実。「国政を論じるこの国の要となる建物」の建築を目指すも志半ばで病によりその職を辞する時、「皆さんが私の財産であり誇りです」と一礼する姿に胸が痛い。妻木氏が託した人々により長い年月を要し完成した国会議事堂。彼岸からどう見ているだろう。そして担った日本橋の装飾・麒麟と獅子は今もそこに住む人々を守ってくれている。そんな佇まいだ。一心にブレずに生きた妻木氏に重ねてしまう。年の初めに良い作品を読んだ。木内さん天晴れ。
2022/01/09
trazom
明治の建築三大巨匠でありながら、日銀・東京駅の辰野金吾、旧東宮御所の片山東熊と較べて、妻木頼黄の影は薄い。作者は、建築家としての妻木頼黄のあり方を、辰野金吾との対比を通じて炙り出す。昨今、忖度・要領・部内政治力・承認欲求などの処世術が言われるが、妻木の生き方は、それと正反対。自らの理念を貫き、上に媚びず、若い人たちを温かく鍛える。何より、汗して働く職人たちへの尊敬を失わないのがいい。作者は、この建築家を通して、現代人が見失っているものを伝えようとしたのだろうか。妻木頼黄の人間性が心に響くいい小説だと思う。
2022/01/13
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
幕藩体制の終焉により新たに動き始めた明治時代。日本の黎明期とも言える時期に建築家として東京のそして日本の町作りの未来を見据えた男たちの物語。新しい欧米の様式を取り入れながらも、日本の文化に適応した物作りを一からやりあげていくお仕事小説だけど、いつの時代も困難を乗り越えて何かを作り上げていく様には熱いものを感じちゃいますな。
2022/05/12
KAZOO
木内さんの最新のドキュメンタリーフィクションです。わたしはこの方と原田マハさん、朝井まかてさんは実在の人物を小説化したら最高の作家さんだと思っています。この作品では妻木という大蔵省に属していた建築家で当時高名であった辰野などと競合しながら様々な建築物を造成していきます。あまり西洋かぶれをしない街づくりをしたいというのが主人公の気持ちで、日本橋や日本勧業銀行の建物を設計し弟子たちが国会議事堂を作り上げました。楽しめました。
2022/01/25
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