ハイドロサルファイト・コンク
ハイドロサルファイト・コンク / 感想・レビュー
starbro
花村 萬月は、ほとんどの作品を読んでいる作家です。 本書は、私小説的な凄まじい闘病記でした。ハイドロサルファイト・コンクとは漂白剤、白くなり死に近づいて行くことの暗喩でしょうか? 実際の著者の体調は・・・ https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-771783-9
2022/04/10
ぐうぐう
手強い小説だ。花村萬月の小説は、いつだって一筋縄ではいかないのだが、本作はより手強い。一見、自身の闘病記のような姿をしているが、読み進めていくとそうではないことがじわじわとわかってくる。執筆と闘病の状況には二年ほどのタイムラグがあり、しかも花村の思いつきで(いや、それは緻密に計算された設計上なのかもしれない)執筆時の現在の場面になったかと思えば、自身の若かりし無軌道な時代のこと、あるいは父と母への複雑な思慕といった過去へと読者を乱暴に振り回したりする。(つづく)
2022/04/04
タナー
花村萬月氏は、私が二十歳を越えたくらいの頃であったか、出会った作家の一人で、当時強烈な印象を受けたのを覚えている。ハードボイルドでもない、ノワールかというと、そうでもない。ただ彼の描くストーリーは、とにかくスゴい。この作品について言えば Amazon のページをみていた時に偶然目にしたのだが、とても気になっていた。あの花村先生が白血病?骨髄異形成症候群って一体どんな病気なの??と思わず目を釘付けにされたとでも、言おうか。"壮絶"の一言に尽きる。著者の、描くことへの執念を感じさせる作品。
2022/08/01
れに
痛々しい小説だな、と思った。痛々しいにも2つある。まず作者が人間として痛々しい。とにかく自慢、自慢、自慢の嵐なのだ。アウトローな俺スゲーだろ?と過去の武勇伝、不幸自慢&自虐風自慢のオンパレード。そしてついでに娘自慢。ぶっちゃけ作者の性格は好きになれないし見たこともない娘は可愛くも賢くもなんともない。もうひとつの痛々しいは、言わずもがな闘病生活について。血液の癌になった作者の闘病体験は手汗を握るほどに痛々しい。病気そのもの、検査による苦痛、薬による弊害。痛さの描写が半端なくて読んでいて動悸がしたのは初めて。
2024/05/28
ウメ
萬月氏の新刊はあといくつ読めるのか。己の血液を全て滅したあげく死を願うような治療の副作用が待つ。身体的、精神的苦痛をここまで冷静に俯瞰して書き上げてしまう作家の業。それすら虚構だと言い切ることで生まれる真実味がある。
2022/03/29
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