ラブカは静かに弓を持つ
ラブカは静かに弓を持つ / 感想・レビュー
ヴェネツィア
タイトルからは北欧風のファンタジーを想像していた。弓は武器としてのそれをイメージしていたのだが、チェロの弓だったとは。主人公に配した橘を、映画『戦慄のラブカ』(架空のものと思われる)をなぞるかのように、音楽教室に潜入させプロットを進行させてゆく手法はなかなかに斬新。音楽を軸に据えたことも物語にふくらみを与えることに大いに寄与している。展開もまたスパイものもどきにスリリングである。ただし、それも師の浅葉に誠意を尽くす決意をするあたりまで。終幕部は予定調和のようでもあるが、弱さは否めないか。
2023/09/28
パトラッシュ
音楽とスパイとトラウマ。三題噺みたいな題目を折り込んで一編の小説をと求められたらベテラン作家でも戸惑うだろうが、見事にやってのけた。現代のホットな問題である著作権侵害の実態調査のため、管理団体職員が音楽教室にスパイとして潜入する冒頭から読者を一気に掴む。その調査員が抱える傷ついた心の問題が少しずつ明らかになっていき、チェロを学びながら教師や仲間とのつながりで癒されていく。遠ざかっていた音楽の素晴らしさを改めて知り、仕事との狭間にあって正しく生きる道を見い出すカタルシスは鮮烈で、神の救いが与えられたようだ。
2022/09/08
さてさて
リアル世界に実際に起こった『著作権』に関する事件をベースに展開するこの作品。そんな作品では、私達が普段深く考えることのない『著作権』に関する問題が、様々な立場からの意見も踏まえて分かりやすく提示されていました。『潜入調査』という衝撃的な役割を命じられた主人公・橘の心の動きを具に見るこの作品。チェロという楽器の魅力を様々な視点から浮かびあがらせてもいくこの作品。『講師と生徒のあいだには、信頼があり、絆があり、固定された関係がある』。まさしくチェロの音色のように深い味わいを感じさせてくれる逸品だと思いました。
2023/01/29
starbro
2023年本屋大賞受賞作、候補作第十弾、漸くコンプリート(10/10)です。安壇 美緒、初読です。本屋大賞ノミネートも納得の良作ですが、過去の受賞作「蜜蜂と遠雷」のように音楽♪が聴こえてきたら、大賞受賞だったかも知れません🎻 https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/rabuka/
2023/04/16
青乃108号
「シン・ゴジラ」を劇場で3度観て感化されてしまい1万円超えの関連アート本を買った俺は、かのゴジラの第2形態のいわゆる「カマタくん」のモデルとなった魚の「ラブカ」は知っていた。「ラブカは弓を打つ」だとばかり思っており、武装した改造ラブカ人間が弓を打ちまくるSFバトル物みたいな話を期待していたら全然違って「弓を持つ」だったのね。チェロ弾きの兄ちゃんがスパイの様な事をさせられて、兄ちゃんはチェロ絡みで幼少時のトラウマ持ちででも肝心なその怖い体験がよくわからんもんやからモヤモヤがいつまでも残ったままで気持ち悪い。
2023/05/17
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