我が友、スミス
我が友、スミス / 感想・レビュー
starbro
第166回芥川賞受賞作&候補作第五弾(5/5)、コンプリートしました。石田 夏穂および本格筋トレ小説、初読です。芥川賞受賞レベルかどうかは別にして、未知の筋トレ&BBコンテストの世界、興味深く読みました。 私が選考委員だとしたら、今回は以下の順位です。 1位「Schoolgirl」、2位「我が友、スミス」、3位「ブラックボックス」、4位「オン・ザ・プラネット」、5位「皆のあらばしり」 https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/smithmyfriend/
2022/03/05
ゆいまある
文庫化がどうしても待てずに購入。堅物会社員が筋トレに目覚め、鍛え続ける内にボディビルの大会を目指す。女は髪を伸ばし、ハイヒールを着用する決まり。筋肉だけではなく型通りの女らしさが求められる。筋トレの喜びと、ジェンダーロールへの違和感を強い力で描いている。私、女だけど、起業して院長になり一定の時間が流れた頃、勝ったと思った。期待される女らしさに囚われず、周りの誰よりも強くなれたと思った。「私」も強くなりたかった。傷つけられないぐらい。その気持ち、だから分かるよ。ラストは涙目。大好きだ、この本。
2022/05/11
いっち
主人公は30歳のOL。1年ほどジムに通い筋トレしていると、元ボディビルダーの女性から大会への出場を勧められる。「うちで鍛えたら、別の生き物になるよ」。主人公は「私は別の生き物になりたかった」と、筋トレを始めたきっかけを思い出し、大会への出場を決意する。大会での評価基準は、筋肉だけでなく、「女性らしさ」を求められるのだった。「世間と同等か、それ以上に、ジェンダーを意識させる場」。それでも大会に向けて追い込む主人公。大会前、舞台裏で一人腕立て伏せをしているときに主人公が感じる幸せに、私はうらやましいと思った。
2022/01/15
tetsubun1000mg
最新作「黄金比の縁」が淡々としたストーリーと設定が面白かったので選ぶ。 芥川賞候補作らしいが、そんな雰囲気は感じられずハードボイルドテイストで進んでいく。 アルファベットと略字なので主人公が女性と気が付いたのは1/3程読んでからだった。 女性でボディビルダーというあまり見たことがない設定だが、カーリングのメダリストが大会に出る時代だからいいんだろう。 知らなかったのだがボディビル大会に出場するには筋肉のバランスだけでなく化粧、脱毛、表情、歩き方などまるでミスコンのようにいろんな面で整える必要があるらしい。
2023/08/18
hiace9000
『黄金比の縁』からの本作。石田作品主人公の女性たちの"マニアック"さ、日常に潜む違和感との人知れぬ葛藤には共感せずにいられない。おそらく著者ご自身もまた 、彼女たちと共鳴しあっているはずだとも。前者(後発だが)の"縁"も、本作の"ジェンダー"も、実はあやふやなものである。それらを目の前に突きつけられる、違和感と不快感。「別物になりたかった」U野にとってその思いだけをもの言わず受け止めてくれるスミスだけは、永遠の友たり得たのだろう。『真珠とダイヤ…』と同じくKamin装画は、エッジの効いた作品に良く似合う。
2023/09/24
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