愚者の階梯
愚者の階梯 / 感想・レビュー
starbro
松井 今朝子は、新作中心に読んでいる作家です。昭和三部作完結篇は、キネマ創成期時代ミステリでした。当時の雰囲気は味わえましたが、ミステリとしては・・・ https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-771803-4
2022/09/26
のぶ
「昭和三部作」の完結編。始まりは天皇機関説に揺れる昭和十年。亀鶴興行の専務の川端が木挽座の舞台で首を吊ったという事件が起こる。警察が現場で自殺の動機を聴取した結果、浮上したのは不敬問題にからんだ一連の騒ぎ。「勧進帳」のセリフが不敬に当たるという。木挽座に苦情や抗議の投書が相次ぎ、果ては壮士の乱入騒ぎまでが起こる。川端の死は本当に自殺だったのか?シリーズの過去二作もそうだったが、当時の時代考証が的確になされている。戦前の雰囲気もよく伝わっていて、それに本格推理をうまく融合させ面白い作品に仕上げていた。
2022/09/15
えみ
昭和十年という時代を限りなく使い込んで、当時の人々の思考を浮かび上がらせている。江戸歌舞伎狂言作者の末裔である桜木治郎が劇場で起こる殺人事件の謎に迫る、雰囲気のあるミステリ。誰がどうかかわり、過去に何があったのか…点と点を結び、線としたときそれは何を描きだし、その描いた内側にはどこに向かう階梯が隠されていたのか。隠されていたドロドロの人間関係が呼ぶ、悲劇の死。第二次世界大戦前の活気溢れる日本のキネマや歌舞伎の世界。馴染みがなくてもどこか混沌としながらの賑わいと、人ひとりひとりに力がある感じが好ましい一冊。
2022/10/08
がらくたどん
昭和の歌舞伎界を舞台に、江戸狂言作者の末裔の大学講師が殺人事件の謎を解くシリーズの3作目。事件の謎解きもさることながら、歌舞伎の舞台裏や演劇興行界の変転がその時代に居るような臨場感で感じられるのがとても楽しい。震災直後の世相を映した『壺中の回廊』から日中戦争間近のちょっと浮かれた気分を背景に事件が起こる『芙蓉の干城』と時代は進み、本作では軍国的国粋に傾斜する昭和10年頃の世相の中で映画人気の波に揉まれながら生き残りを図る歌舞伎界で波間に沈む犠牲者の悲運が描かれる。名優沢之丞も老いた。三部作はこれにて完結。
2023/02/01
星落秋風五丈原
戦争に向かってきなくさくなる時代の話。最初に掲げられた「勧進帳不敬」問題がどこかにいってしまった。
2022/09/28
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