よき時を思う
よき時を思う / 感想・レビュー
starbro
宮本 輝は、永年に渡って新作をコンスタントに読んでいる作家です。蟹、キャビア、ジビエ、シャンパーニュ等、豪華絢爛な晩餐会のシーンは、圧巻でしたが、著者の作品としては感動控え目でした。四合院造りの家に、一度棲んでみたいです。 https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/yokitoki/
2023/02/16
ちょろこ
凪、の一冊。よき小説だ、と思う。90歳を迎えた祖母が計画した晩餐会を描いた家族物語は穏やかな人に囲まれたような凪のような心地よさ。なぜに祖母はここまで本気の晩餐会を計画したのか…その理由に思わず背筋が伸びる思い。16歳のあの時、見ていると幸福な気持ちになる"大きな箱"を知ったからこそ得たかけがえのない幸せが溢れんばかりに心を伝った。四合院造り、吃音も物語に深みを添える。心離れた家族なれども必ずクロスする時、場がある。よき時のための一歩と幸福を探す大切さ。そして荒波乗り越えてこその凪の尊さをしみじみ思う。
2023/05/25
あすなろ
宮本輝氏の最新作。輝氏の一つの作風系統である食や建物等が紡ぐ日常の延長線上からの別世界を描きながら、各々の人生や家庭、ルーツを描いている。正直、前作よりこちらの方が僕は良かった。先程記した別世界とはこんなイメージである。ここに坐っていると、壮大な物語に登場する生き物に飲み込まれている様な気がしますね、と作中語られているがそんなイメージなのである。今作の晩餐会然り、四合院造りの家然りである。それらより紡ぎ始められる各々の物語。読者が揺蕩えるシーンの提供が素晴らしいと感ずる。
2023/06/03
ゆみねこ
金井徳子という女性が歩んだ人生を孫である綾乃の目を通して語る。戦争、16歳での結婚、2週間の新婚生活と夫の戦死。夫の死後数年間婚家に留まった理由と教師として生きた戦後。90歳まで生きたら豪華な晩餐会を開いてみんなを招待するというおばあちゃん。そんな徳子おばあちゃんを大切に思う家族たちと徳子さんの素敵さ。とても良い物語でした。綾乃の住む四合院の家と家主一家のエピソードがまた良かったです。
2023/02/21
J D
宮本輝氏の健在ぶりを示す小説だったように思う。宮本輝氏の小説は、「生と死」「人の業」がテーマで語られて行く。今回もそう。孫の綾乃を通して徳子ばあちゃんの「生と死」を語り、最後に三沢兵馬の「業」を語って物語を閉める。徳子ばあちゃんの晩餐会では、料理やワインに対する春明の言葉は、まるで宮本輝氏が言っているように思える場面もあり何となく微笑ましく思えた。ライフワークとしていた「流転の海」も終わり、あとどれだけ宮本文学を味わえるのだろう。宮本輝氏と同じ時代を生きられることに感謝。
2023/03/26
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