いい子のあくび
「いい子のあくび」のおすすめレビュー
ダ・ヴィンチ編集部が選んだ「今月のプラチナ本」は、高瀬隼子『いい子のあくび』
※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2023年9月号からの転載になります。 『いい子のあくび』 ●あらすじ● 向かいから人が来ていることや、来客用のお茶が切れていること。子どもの頃から、人より“気づく”のが早かった直子は、余計なことをしたと思われないよう、さりげなく“いい子”であるよう気を配り続けてきた。その反面、自分ばかりが背負わされることに、割の合わなさを感じてもいて……(「いい子のあくび」)。表題作ほか、「お供え」「末永い幸せ」の2編を収録。 たかせ・じゅんこ●1988年、愛媛県生まれ。立命館大学文学部在学中に文芸サークルに所属し、小説の新人賞に投稿を始めた。会社員勤めしながら書いた『犬のかたちをしているもの』で2019年にすばる文学賞を受賞しデビュー。21年、『水たまりで息をする』が芥川賞候補となり、翌年『おいしいごはんが食べられますように』で同賞受賞。 高瀬隼子集英社1760円(税込) 写真=首藤幹夫 編集部寸評 右手で悪意を投擲し、左手で善意を守る 私の身長は日本人男性のほぼ平均らしいが、人にぶつかられたり、舌打ちされることはわりにあるようだ。「同じ人混みでも(中略)駅の人…
2023/8/4
全文を読むながらスマホの自転車にわざとぶつかってみた…「いい子」は割に合わないことを物語る『いい子のあくび』
『いい子のあくび』(高瀬隼子/集英社) 雨の日に、傘を真横にして歩いている人を見ると、ときどき「刺さりにいってやろうか」と思うことがある。「痛い!」と腹を抱えてうずくまれば、それがどんなに危険であるか思い知るんじゃないか、と。もちろん、リスクが激しすぎるので実行したことはないが、歩きスマホ・自転車のよそ見運転に対して、それを実践してしまうのが高瀬隼子さんの小説『いい子のあくび』(集英社)の主人公・直子である。 誰にでも愛想がよくて、気配りがきいて、その人が欲しいであろう言葉をさりげなく提供できる直子は、「いい子」で「いい人」である。けれど根っからの善意で行動しているわけではなく、すべてが作為である自覚があるから、それに気づかず無邪気に自分を愛し結婚したがる恋人の大地のことは、見る目のない馬鹿な男だと思っている。そんな彼女の、負の感情を発露させる先が、「避けてもらって当然」と思っている道端の人たちだ。 直子は、スマホをしながら自転車を漕いでいる中学生に、体当たりをしにいくわけじゃない。ただ、避けなかった。結果、ぶつかって、彼も転んだ。それだけ。その場…
2023/7/15
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いい子のあくび / 感想・レビュー
ヴェネツィア
表題作(中編)+2つの短篇。いずれも一人称の独白語り。これがこの人のスタイルなのだろう(少なくてもこの時期の)。視点が「わたし」であるがゆえに、他の登場人物たちは全て「わたし」のフィルターを通して眺められ語られる。恋人の大地も、それぞれタイプの違う二人の友人も。一方「わたし」は、他者に対しては表面上は常に「いい子」であるが、そうではない内実を持っている。もちろん、そのことを「わたし」は重々承知している。最初に小さな事件、そして最後にこれと呼応するような大きな事件が起こり、「わたし」を揺さぶるが⇒
2024/01/25
starbro
高瀬 隼子、3作目です。世知辛い現代を生きる市井の人々の違和感を描いた短編集、オススメは表題作「いい子のあくび」です。歩きスマホは、危ないので絶対止めて下さい。私は歩きスマホをしたり、ぶつかったりしません(笑) https://www.bungei.shueisha.co.jp/shinkan/iikonoakubi/
2023/08/09
fwhd8325
否定的な意味でなく、最近は息苦しい作品が多いと感じています。表題作「いい子のあくび」の主人公は、どこか、自分に似ていると感じ、それが嫌であると同時に、同じ人がいることでの安心感を得たりします。「お供え」「末永い幸せ」の2編は、女性ならではの感覚が強異様に感じましたが「末永い幸せ」の感覚は、よくわかるような気がします。
2023/10/04
やっちゃん
超人もマスク変えると性格も変わるがこの娘何枚マスクをもってんだよ‥素の自分を大事にした方がいいとはいうが、どれが本来の彼女なのか。嫌われてる桐谷さんが自分もそうかと思うと怖い。現代女性の思考深くに入り込む文章は自分が女性になったかのようなリアルさがある。これも名作ですね。
2024/01/26
うっちー
歩きスマホ、ホント危ないです
2023/11/28
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