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海炭市叙景

海炭市叙景

海炭市叙景

作家
佐藤泰志
出版社
集英社
発売日
1991-12-01
ISBN
9784087728255
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海炭市叙景 / 感想・レビュー

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yukamana

以前、この本の感想を読んで函館をモデルに書かれた本とは知って読みました。映画化されているようなので見てみたいです。

2016/01/03

丘野詩果

海炭市に住む、市井の人々のさまざまな生活。 群像劇といえるだろう。北の小さな地方都市に同時に存在する挿話的物語。 職を失い、小銭をかき集めて日の出を見に山に登る兄妹。ロープウェイの代金がひとり分しかないために、兄は雪道を歩いて下山し、遭難する。父の住む故郷に家族と移り住む満夫、浮気して出て行った妻のあとに再婚し、2度目の妻の息子への虐待に心痛める春夫、中学をズル休みして、切手を買い、映画を見に行く淳、殺人を犯して、偽名でパチンコ店で働く幸郎、孫の誕生を待ちながら安全運転を心掛ける路面電車の運転手達一郎・・

2014/10/08

zakuro

暗さ寒さ貧しさに満ちた短編が18話も続いて、苦しいまるで拷問のような読書だった。時代はバブル真っ只中のお話なのに、景気の良さが感じられない。炭鉱で栄えた町のバブルは廃坑と共に終わっていて第三次産業を中心としたいわゆるバブル経済の余波はそこには及ばなかったのだろうか。頑なに東京と言わず「首都」と表す作者のこだわりに地方都市と東京との物理的精神的距離を感じた。最後のお話だけがなぜか村上春樹風だった。何回か出てきた「海炭市(函館市)内の三流私大」ってどこのこと?と意地悪く検索してみたりした。

2017/05/31

Mc6ρ助

『列島中にあるひとつの街の中で、彼は一九五五年から電車に乗り続けてきた。今日の彼は、そのどの日よりも、あの夏祭りに花に埋ったミス・海炭市の娘さんを乗せる時よりも、数倍も注意をおこたらない。銀座の交差点が見え、何人か停留所で待っている。髪の長い娘は、本を閉じ、セカンドバ ッグから小銭を出している。ここで降りるのだ。停留所がどんどん近づく。山が問近い。(p106)』この短編を境にただ暗いだけと思われた話から、少しづつ味わい深いものに変わってくる。「物語の向こうに時代が見える」(川本三郎著)を読んで。

2017/06/10

ぷく

様々な人々が、それぞれの場所で、確かに生きている。そして彼らの、彼らだけの営みはこれからも続いていくのだろう。それが幸せなのかそうではないのか、彼ら自身にも今はまだわからないのだろうけど。『まだ若い廃墟』『裂けた爪』『夢みる力』『衛生的生活』が心に残った。

2017/05/07

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