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幻のイマージュ

幻のイマージュ

幻のイマージュ

作家
エルヴェ ギベール
堀江敏幸
出版社
集英社
発売日
1995-12-05
ISBN
9784087732368
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幻のイマージュ / 感想・レビュー

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tenkawa

★★★★☆☆ 作家であり写真家でもあるエルヴェ・ギベールの写真にまつわるエッセイなのか、写真論なのか。とても共感できた本だ。写真そのものは幻のように儚いもの。撮れなかった光景ばかり記憶に焼きつく。写真を見ることで記憶が上書きされる。そういった、なかなか自分が言語化出来なかったことが、かさぶたを剥ぎ取ったばかりの傷口に触れるような感度で書かれてある。何度も読み返そう。

2017/11/13

wadaya

車窓から外の景色を眺めるのが好きだった。僕は写真という芸術が苦手で、それは写真が被写体を一度分解して再構築できない、つまりカメラという機械を通すことに起因していた。被写体と作品の間に、人の脳を通したクリエイティブなものが必要だと思っていた。でもそれは芸術の一側面に過ぎなかったようだ。作品を見てそこからイメージを喚起させる。作品自体に意味があるのではなく、そこから何かを思い巡らし感動に結びつけることに価値がある。僕は車窓を流れる景色の中に、連続写真のように自分自身の姿を見る。それは幻のイメージに似ていた。

2017/10/28

水原由紀/Yuki Mizuhara

翻訳:堀江敏幸。ギベールのエッセイ集。写真が記憶より忘却と密接に結びつくことや写真的文体などなど。バルト『明るい部屋』との対応は多々見られる(例えば母の写真が現像できなかったことと、『明るい部屋』における温室の写真、そして本書で語られているRB=ロラン・バルトとの間にあった「死に最も近い写真」のやりとり)ので補助線や補強、あるいは別口からの対応として。写真はどこまでも印画紙に転写された幽霊だと思うのだけれど、それをきちんとした形象で固着できるかどうか……は再びあちら側へと持ちこされる。

2014/02/19

dilettante_k

原著は81年。著者が2年間ほどで書き溜めた、イメージと写真、テキストの3者の関係をめぐる60編余りの短文を収録。撮り損ね、現像できなかった母の写真にまつわるエピソードにはじまり、3者の不安定な離接合が書き留められていく。ギベール(自身が写真家でもあるのだが)のファンタスムの領域で、写真はイメージに到達できない残滓のような存在である。しかしテキストと相克することで、かろうじてイメージ=秘密を他者に引き継いでいく。母の写真を出発点としたバルト『明るい部屋』(80年)と対蹠的に、その不能性を語った「写真論」。

2014/01/27

渡邊利道

『明るい部屋』からインスピレーションを汲み出しつつ、小説へと向かっていくエッセイ集。虚構について、事実の裏切りとしての「書くこと」。乱雑に投げ入れられた箱。ゲーテ『イタリア紀行』の日記をもとに再構成する形式への指摘。カフカへの手紙、写真の所有者は誰か?という問いと手紙の所有者は誰か?という問い。スナップショットとしての文章。

2020/08/29

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