さいごの恋
さいごの恋 / 感想・レビュー
りつこ
余命を宣告された作曲家が妻と離れて一人海辺の別荘に向かう。死ぬために訪れた別荘で偶然出会った人妻に片思いにも似た淡い感情を抱く。主人公の意識は途切れがちで、もしかするとこれらの出来事はすべて幻だったのかもしれないと思うほど。だが不思議と悲壮感はなく、軽やかで楽しささえも感じられるのは、もうすでにこの世から離れようとしている身の軽さゆえなのか、あるいは美しい情景描写のせいなのか。よく知っているわけでもないのに「いかにもフランス的」なんてことを言いたくなるような、洒落た作品だった。
2016/01/10
マリカ
始まりは悲壮感が漂っていて、嫌な予感がしてしまいましたが、だんだんよくなっていって、ラストはほっとします。なぜタイトルの「さいご」をひらがなにしたか。野崎さんのセンスがここにも表れている気がします。実はフランス語で小説を読む練習をしたくて、候補を探しているところ。この本はストーリーもシンプルだし、ボリュームもないのでちょうどよいかもと思っています。最初からフランス語で読むのは厳しいと思い、日本語で読んでみたのですが、野崎さんの翻訳が美しくて、うっとり。自力で読んだときの印象とかなりギャップがありそう。
2012/02/22
貴
残された最後の時間「Bye Bye Blackbird」を歌ってもらう、とても複雑な気持ちでした。
2022/11/28
ムーミン2号
爽やかな恋愛物語でもなければ、艶やかな恋の物語でもない。現代音楽の作曲家が余命幾ばくも無い中で、長年連れ添った妻を遠ざけ、一人死地と定めた別荘でその時を迎えようとしている。ところが、勘違いから出会いを果たした魅力的な女性に惹かれてしまう。彼女がそれに応えようとするのは、彼が死する直前だからか? 線香花火が散る前のような一瞬の閃光を放つ恋。一方、駆けつける妻に言い寄るタクシーの若い運転手。それを無視して着いた先ではピアノの音が聞こえている。妻の喜び…そこまで。最期まで異性に惹かれるのが人の我儘だろうか。
2017/12/13
nranjen
すてきな表紙と海辺の情景、光や砂、風の印象がオーバーラップする。音楽と文章の戯れを感じさせる。
2017/06/04
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