僕には世界がふたつある
僕には世界がふたつある / 感想・レビュー
(C17H26O4)
ケイダンは航海をしている。片目に桃の種が入っている船長と喋るオウムと共に。無秩序で不思議な航海はまるでファンタジー。でもこれは精神疾患による妄想や幻覚。自分の一部が自分からはみだして、自分とそうでないものの区別がつかなくなる。目覚めても夢の世界が消えていかず、現実の世界との区別がつかなくなる。症状が重くなっていく過程はどんなに恐ろしいだろう。どんなに孤独だろう。ふたつの世界を行きつ戻りつし、現実の方が侵食されていく様に精神疾患の深淵を見た。読めてとても良かった。→
2018/07/30
☆よいこ
海賊船に乗り、世界一深い海を目指す物語。キッチンのテーブルに縛り付けられモンスターに襲われそうになっている話。高校に通う少年の話。三つの世界が同時進行し、どれが妄想なのか現実なのか混じり合う。幻想小説かと思わせつつ、統合失調症にかかった少年の物語だった。▽YAだけれど、幻想の垂れ流し的な流れは読みにくかった。愉快ではない。痛い話イコールYAだとは思わないが、こんなのばかりだとオススメしにくいな)精神疾患について興味のある人向け。
2018/08/19
星落秋風五丈原
YAといっていいのか大人向けといっていいのか悩む。自身も精神疾患の息子がいる作者が描く3つの世界で苦しむ少年。お互いを殺そうとしている船長。途中でいなくなる船首のカリオペと航海士。それぞれが暗示するものや世界って何だろうと思いながら読む。
2017/08/21
小太郎
統合失調症の世界がこれほどリアリティのある世界として語られているのが凄い。主人公ケイダンは毎日いろいろな不安を恐れている。両親も友人も変な目でケイダンを見る。一方ケイダンは謎の海賊船に乗ってマリアナ海溝を目指している。精神疾患で入院しなければいけなくなるケイダン。海賊船でオウムや船長と冒険を重ねるケイダン。日常と夢の世界の境界が段々と崩れていく過程が不思議な求心力となって読者を惹きつけます。著者の後書きを読むとある意味ノンフィクションに近い話らしいですが、それをこのような物語にするのは素晴らしい。
2021/11/19
杏子
精神疾患を負った少年の現実と幻影が入り交じった世界。二つの世界が交互に描かれて、最初は何のことやらわからず、読むのに苦労した。9月から延長くりかえしやっと読めた!精神疾患をもつ患者さんのことが少しだけわかったような? 暗示している人物のことがいまいちよくわかってないような気もする。こんなに疲れる読書はそうないな。作者の息子さんの経験が元になった作品だそうで、真に迫る。複雑怪奇な挿し絵を眺めていても、その大変さを察することができる。そんな家族をもつことが多いアメリカ社会もまた大変。こういうこともあるんだね。
2017/10/14
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