語りなおしシェイクスピア 2 リア王 ダンバー メディア王の悲劇
語りなおしシェイクスピア 2 リア王 ダンバー メディア王の悲劇 / 感想・レビュー
ヘラジカ
登場人物それぞれが活き活きと饒舌に語る現代の『リア王』。『パトリック・メルローズ』は続けて読んでいると食傷気味になりそうだったが、この作品ではその毒素が適度に香草のような役割を果たしている。嫌らしい人物像に、悪ふざけ的なブラックジョーク。それだけではなくオリジナルに対する誠実な肉付けも十分にある(フロレンスとクリスの関係など)。エドワード・セント・オービンはシェイクスピアとの相性が抜群だ。結末は現代的な視点から見ればやや強引にも感じられるが、かの有名な物語を、ここまで実のある”悲劇”たらしめる筆力は流石。
2021/03/05
NAO
「語り直しシェイクスピア」シリーズ。欲のかたまりのような姉たちは原作そのもので、次女が残忍な性格であるのも原作通り。三女フロレンスの行動力がいかにも現代的で、ただおとなしいという印象しかなかったコーディリアとはイメージが違うなあと思っていたら、解説に、「リア王に振り回される娘たちにもきちんと肉付けを行い、特に原作ではあまりにも寡黙で薄っぺらなコーディリアにしっかりした人間性を与え、欠点もある生身の人間として登場させたかった」という作者の言葉が紹介されていた。いい感じに変わっていると思う。
2022/02/04
たま
語り直しシェイクスピア3作目。面白かった。自らのメディア帝国から追放されるヘンリー・ダンバー。リア王のプロットを現代に再現しているが荒唐無稽にならずリアリティがある。同じサナトリウムのアル中喜劇役者との応酬、湖水地方を一人彷徨う述懐など、シェイクスピア的なスケールの大きい修辞(荒れ狂う大自然と人間の栄光と悲惨)が読ませる。ダンバー帝国を巡るマネーゲームの金額は途方もないが、娘二人をはじめとする敵対勢力は粗野で卑小に描かれ、ダンバーの愛と苦悩を際立たせる。けれんみたっぷりの作品だが基本のテーマは真っ直ぐ。
2021/12/19
星落秋風五丈原
企画側の思惑を躱し続けてそれでも原典を知る人にはわかるアレンジを加えた現代版リア王になっている。但し前半の父王の「どれだけ愛しているか言ってくれ」から三女追放、その後のがらっと環境変更まではすっとばしで、いきなり荒野ならぬ人里離れたホームに現代のリア王は放逐され彷徨う。どう彷徨ったってだれか見つけてくれる、通信衛星あるし、メディア王ともいわれたインフルエンサーだから。現代でいうと王はメディアを制することになり、戦争は経済戦争に。ゴネリルとリーガンを翻弄するエドマンドはもっとイケメンであって欲しかった。
2021/06/03
アヴォカド
リア王やシェイクスピアを読んだことがなくても、楽しめると思う。でも、読みながら、む?このセリフは確かあれの…とか、この関係性はこの構造はあれと似てるような…などとモヤモヤしていたものが、河合祥一郎氏の解説にて、そうだそうだった!とスキッとする。セント・オービンがいかに研究したか凝ってるかがわかる。
2021/05/14
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