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メアリ・ヴェントゥーラと第九王国 シルヴィア・プラス短篇集

メアリ・ヴェントゥーラと第九王国 シルヴィア・プラス短篇集

メアリ・ヴェントゥーラと第九王国 シルヴィア・プラス短篇集

作家
シルヴィア プラス
柴田元幸
出版社
集英社
発売日
2022-05-26
ISBN
9784087735192
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メアリ・ヴェントゥーラと第九王国 シルヴィア・プラス短篇集 / 感想・レビュー

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buchipanda3

著者は詩人として名が知られているそうだが、近年、小説の方も再注目されているらしい。収録作を読んでみると、繊細ながら大胆という印象を持った。描写に感受性の強さが現れるが、それを包み隠さず物語として昇華させており、どこか引き付けられる。タトゥーの話は閉空間の密度感が良い。病院の2篇も読むほどにクセになる。恐れという感情がありながら止められない人間の可笑しさ。他人事を自分事のように感じそうな共感性。でもそこに正直な人間味がある。どの物語も不思議感があるが現実的な幻想のように思えて、その感性に誘い込まれていった。

2022/07/05

ケイ

2年前に詩を少し読み込んだ時に、夫のテッド・ヒューズとともにシルヴィア・プラスは印象深く心に残った。柴田元幸さんが新訳を出されたので(この方、本当に色んな方を精力的に訳される)、詞以外にも短編をこんなに書いていたのだと知る。表題作が圧倒的。他の短編が全て霞んでしまった。誰にも思いつかなかった最後の希望……思いつくなんて凄いじゃない、えいっ!引け!…よし!…ん?ん?もしかして。。。いや、いいの。自分にとって素晴らしければ、そこはそれでいいの。『熊』もイイわ。そうよ、ガツンと襲ってやれ。

2022/06/19

アキ

シルヴィア・プラスは1963年に32歳で自死した詩人で1965年ピュリッツァー賞受賞。死後約60年経ての初短篇集。1950年代に書かれた小説だが、表題作を含めて8篇とも家族とその周囲の人々の織りなすドラマの一場面が描かれている。印象に残ったのは「五十九番目の熊」で彼女が最後に見た熊。「ジョニー・パニックと夢聖書」で精神科のカルテに書かれた夢に取り憑かれた秘書の話。「プロッサム・ストリートの娘たち」で総合病院で働くイカれた秘書たちの日常。「みなこの世にいない人たち」で亡き友人たちへの思い出話で寂しく終える。

2023/01/16

(C17H26O4)

凄くよかった。特によかったのは、若者が人の死を捉え受けとめた瞬間を何気なく描いた『ミスター・プレスコットが死んだ日』と『ブロッサム・ストリートの娘たち』。YAのような読み心地だが、軽さの向こうから不意打ちのように現れたかなしみに胸を突かれて、その瞬間、涙が吹き出すように出た。全8篇。著者の短い人生を思い、死や別れをどうしても連想する。表題作、少女に汽車に乗るよう母親が彼女を急かして言う。「誰もが遅かれ早かれ、去らないといけないの」少女が辿り着いた陽光降り注ぐそこもいったいどこなのか。助かったといえるのか。

2022/08/03

天の川

シルヴィア・プラス初読み。両親に背中を押されるようにして乗った第九王国行きの列車。第九王国がどんなところなのか、不安を掻き立てられる少女に示唆を与える隣席の女性…宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を思い出しながら読んだ。少女の決断とラストの美しさ。でも、そこは一体どこなのだろう?安心と不安がないまぜになる。ハリケーンが迫る病院での秘書たちの生き生きとした会話の『ブロッサム・ストリートの娘たち』も面白い。とは言え、華やかな経歴を持ちながらも心を病み、若くして自死した作者の不穏な気持ちも見隠れするのだ。

2023/06/16

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