女たちのジハード
女たちのジハード / 感想・レビュー
遥かなる想い
第117回直木賞受賞作。保険会社に努める女性たちの結婚・悩みなどの揺れを丹念に描く本でありながら、それでもなぜかその底に蠢く怒りのようなものを感じていた。迫力ある小説である。現代に生きる女性たちのたたかいを温かく応援の目で描いているような気がするが、「ジハード」とは…聖戦らしい。
みも
「ジハード」とは随分大仰な…且つ、なんて物騒な呼称を使ったタイトル…そんな軽々な印象は、読み進めるにつれ雲散霧消…人生を賭して懸命に生きる女性達の姿は、まさに「聖戦」の名に相応しい。バブル景気の残滓がそこかしこにこびり付いている時代、5人の女性それぞれの思惑で幸せを追う過程で、打算的な女性の本音が赤裸々に語られる。各々の立場は峻烈で逼迫感もあるが、一方で仄かなペーソスがユーモアを醸成し、読後に鬱屈感はない。連作短篇形式を採用し、多彩なエピソードで彩りも豊かに、破綻も無く見事に集約している。通読が望ましい。
2018/10/07
タックン
直木賞受賞作。再読もしくは林真理子さんとかの作家さんで読んだような気がする作品。まさに題名のような5人のOLのジハード(聖戦)の物語。バブル崩壊後の閉塞感のある重苦しい雰囲気が作品に出てたけどちょっと古いかな。今の時代やうちのような田舎は女性は結婚しても働くのが当たり前なのでちょっとずれてるような気が・・・。それにしても女性はしたたかで強いしたくましいなあ。
2013/11/16
HoneyBear
この作家は女性の感情の変化などを表現するのが巧いなあ。自分は男だが、女性からみた男性への視点なども凄く面白く身につまされるようだった。主人公のそれぞれがふとした出会いをきっかけに、想像もしなかった方向へと人生を切り拓こうとしていくところに逞しさを感じた。結構オロオロと成り行きに左右されていながらもそこから「吹っ切れた」決断を下していくところが小気味良い。特に康子が競売物件を手に入れたり新事業に乗り出す話には「この人生で良いの」と叱咤激励されているよう。結構笑ったし、読後感は爽快。
2014/12/26
きさらぎ
世の中に「普通のOL」などという人種はいないし、「普通の人生」もない。「普通の男」が存在しないのと同様に「普通の結婚」などというものもありえない。その度に判断に迫られながらたった一つの自分の人生を選び取っているのだ。自分の強みだと思っていたものが、自分の対象とするものには何の役にも立たなかったり、夫の出世のために自分が左遷されたり、妻としてではなく実家の働き手としてと結婚しようというくだらない男とつい寝てしまったり。自分を磨き、安売りすることなく、少し(かなり)勇気をもって進めれば、そこから立ち直れる。
2017/09/18
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