詩集 1999
詩集 1999 / 感想・レビュー
アナーキー靴下
「青年のときは 軍国主義の合唱に耳をふさいで 死んだふりをしていればよかったが 老人年金をもらうようになってからは 生きているふりをしなければならない」生前最後の詩集である本書は、生を愛おしむようだ。だからこそ「さよなら」が胸に突き刺さる。木は、生きていても、幹の大部分は死んだ細胞だという。創作活動において、作品は死んだ細胞のようなものだと思う。木が生きている間は、抱えている死んだ細胞が、意味や価値を変化させながら存在する。死んだ木は、もう二度と変化しない。エンバーミングされるか、朽ちて恵みを残すかだ。
2021/04/11
みねたか
田村隆一の最後の詩集。全般に肩の力が抜け、酩酊感漂う中、過去と現在、彼方の場所へと自在に行き来しながら、随所に鋭い刃のような言葉が綴られる。「美しい断崖」、「油」、「春画」、「アブサン」、「金色のツルハシ」など印象深い作品多数。
2016/07/13
S.コーニック
「詩」が「物」なら「記憶」も「物」だ。それは時に重荷となって人を押し潰す。そして人は「記憶」に殺され得ることになぜかしらあまり自覚的ではない。その上、人が前に進むためには「物」をずっと抱えておくことはできない。そうであるならば、ぼくは「物」を売って歩いていけばいい。一挙両得、濡れ手に泡だ。それができたなら田村さんと夢の中で酒を酌み交わそう。ぼくは別に安物のウィスキーで構わないが、田村さんにはぜひ良質のものを。
2021/02/05
おはなし会 芽ぶっく
小学校の国語科単元で、詩のがあるので読みましたが、これは小学生向きではありませんでした。田村隆一さん最後の詩集です。
2019/04/12
ちあき
この人は生涯どれだけの酒を飲んだのか この人は生涯どれだけの本を読んだのか 年老いた詩人の言葉はひからびもせずかたくなにもならず どこまでも自由に響くのだった
2009/11/02
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