スミス海感傷
スミス海感傷 / 感想・レビュー
踊る猫
「見ず知らずの男のチンポしゃぶりながら、どこかで人生について考えてるだろ」(p.117)というセリフが印象に残る。藤沢周の小説の登場人物は聡明でチャーミング。とことんまで俗に溺れ破天荒に生きているようでも、一方では妙な律儀さを持っていてそれ故に生きづらそうにしている。それが外部のスローな変化と内面のハイテンポな思念の変化という「ズレ」として結実するのだろう(わかりやすく言えば、頭が回り過ぎるということだ)。拳銃・セックス・アウトローの三題噺を通俗的に描いたようで、しかし唯一無二の凄みは感じ取れる。興味深い
2020/07/07
sibafu
「カナル高浜」、「スミス海感傷」、「アズマぁ」の三篇収録。「カナル高浜」は、本物か偽物かわからない拳銃を使って中学生三人がロシアンルーレットをする、というような話。これは『スタンド・バイ・ミー』や大橋裕之さんの『夏の手』、あるいは『リリィ・シュシュのすべて』のような、幼い多感な時期を思い出させる刺激的な話だった。前途洋々、縦横無尽のあの頃に戻りたくなるのだった。他の二篇はあまり記憶に残らず。
2012/10/17
いのふみ
玩物喪志のようなものを通して、世界と駆け引きをする三人の中学生……「カナル高浜」。徹底してクールな娼婦の現在、父や幼時の記憶、異母兄弟……「スミス海感傷」。そして「アズマぁ」。白眉だと思うが、無断欠勤をするアズマとそれをどやしに行く上司のやりとり。アズマのぼんやり具合、上司の乱暴さが笑えるが、最後に呆気なくサスペンドされ、ゾッとする。
2011/04/26
eazy
ごく短い「アズマぁ」がオモロイです。「サイゴン・ピックアップ」もそうだったけど、 この手の男の一人称で語られるストーリーが好きだ。 無断欠勤するたよんない後輩を怒鳴り付けにいくヤクザなサラリーマンの話ですが、 状況がなんだか妙な具合に緊迫して張り詰めていて、しかもそれがバイオレンスとして吹きだすのか、 笑いとして吹きだすのかわからないようなムズムズする面白み。
2000/01/21
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