オリガ・モリソヴナの反語法
オリガ・モリソヴナの反語法 / 感想・レビュー
nico🐬波待ち中
あまりの衝撃、憤り、そして感動。色々な感情が込み上げてくる。リアルで苛酷で、けれどユーモアも忘れない読み応えのある物語だった。何より舞踊教師オリガ・モリソヴナの計り知れない魅力。教え子達が多大なる影響を受け、その人柄に夢中になるのもよく分かる。彼女が生徒達を罵倒する時に操る反語法は、その裏側にある彼女自身が体験した辛い悲劇を吹き飛ばし、周囲の人達を励まし背中を押してくれるものだった。今回も頁をめくる手が止まらなかった。小さい頃チェコスロバキアで過ごし、ロシア語通訳を務めた米原さんでなければ描けない作品だ。
2018/08/10
夏
1960年頃、プラハのソビエト大使館附属学校に通っていた志摩。そこにはオリガ・モリソヴナという名物舞踊教師がおり、志摩は懐かしく彼女のことを思い出していたのだが、彼女がなぜか「アルジェリア」という語に怯えていたことを思い出し、彼女の過去を調べ始める。想像以上に悲惨な彼女の過去やその周りの人々の昔話に衝撃を受けた。スターリン体制下で逮捕された人々の手記や物語をこれまで読む機会がなかったので、ここまで非道なことが実際に起こっていたのかと怒りが湧く。日本人だけでなく、世界中の人に届いてほしい名作だと感じた。
2021/12/27
nico
今度の旅行に向けて「ドイツ題材の小説」で検索して出てきた中の1冊。実際はソ連が舞台だったけれど読んでよかった!プラハのソビエト学校に通っていた志摩が、学生時代影響を受けた2人の教師の生い立ちを探るストーリー。その過程で判明したラーゲリでの生活、政治的背景など、あまりにもひどくて衝撃を受けた。そんな中でも他者を助け、必死で生き延びたオリガ・モリソヴナ。反語法は悲劇を乗り越えるための手段だったと分かって胸が詰まった。社会体制によってこんなに生活が危険に晒されるなんて信じられない。今の平和の有難みを実感した。
2019/04/05
Tadashi_N
しっかりした取材で描かれた、戦争時ソビエトの暗部。同級生同士のつながり。
2020/01/22
miu
ただただ凄い。素晴らしい。米原万里さんの実体験がベースとなっているフィクション。プラハのソビエト学校で出会ったオリガ・モリソヴナというダンス教師とエレオノーラ・ミハイロヴナというフランス語教師。彼女たちの半生とは…。ソビエトの黒く悲しい歴史。なぜ彼女たちはチェコにいたのか。彼女たちの娘とは何者なのか。まるで映画を観ているように目に浮かぶ情景。こんなに骨太で体の芯から震えるような物語はなかなかであえない。米原万里さん凄い。
2016/03/09
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