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蝶のゆくえ

蝶のゆくえ

蝶のゆくえ

作家
橋本治
出版社
集英社
発売日
2004-11-26
ISBN
9784087747171
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蝶のゆくえ / 感想・レビュー

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クリママ

6編の短編集。第1編「ふらんだーすの犬」虐待が題材であり、淡々と綴られる文章は、まるで新聞記事のようにリアルで、同様の事件を思い起こし、その悲惨さ、理不尽さが胸が痛い。若い女性の会話であったり、夫を突然を亡くした主婦であったり、第1編とは正反対の教養と品位のある家庭であったりと、気づけばすべて女性が主人公だった。その客観的な筆致は怖ろしく感じるところさえあり、これが橋本作品なのかととても印象に残った。

2021/02/14

キムチ

よく知られた「ネロとパトラッシュ」が大聖堂のルーベンスの壁画の前で亡くなっている物語(小学校のころに読んで、一人で布団をかぶっておいおい泣いた記憶が)と同名の題名とされているが・・ ネロはパトラッシュに包まれたぬくもりの中で黄泉の世界へ旅立ったが、この作品の孝太郎は7歳で名もない若い看護婦の柔らかい手を「母親の温もり」と思ってか・・笑みすら浮かべて?亡くなった。 余りの衝撃にも橋本氏は一切感情を入れないというのが批評的メッセージか。凄い作品としか云いえない。

2013/06/28

てらこ

さまざまな年代の女性たちを描いた短編集。児童虐待がテーマの「ふらんだーすの犬」が一作目で、最初からえぐられました。普段ニュースで断片的に見聞きしているだけの「虐待」が、ひょっとしてこんな風に生まれているのかも…と思うと怒りと虚しさがこみ上げてきます。他の作品では、定年退職した3日後に亡くなってしまった夫とその妻を描いた「浅茅が宿」、老いた母の怪我の知らせを機に故郷を訪ねる主婦が主人公の「白菜」が好きでした。細かい感情の動きがいろんなところに散りばめられている感じがして、読むたびに発見がありそう。

2020/02/22

還暦院erk

図書館本。最初の短編がツラ過ぎて、しばらく他の短編読めなかったが、続く5作品は理屈っぽさが橋本さんらしくて割と楽しんで読めた。携帯を壊すシーンが2作品に出てきたけど、これ、今どきの人にとってインパクトあるんだろうなぁ。「浅茅が宿」は特異な設定なのに妻や子供たちの反応描写がリアル…。子どもの虐待ものには心がぎゅうぎゅう痛くなるわたしは、悲惨な最期を遂げた夫にあんまり感情移入できなかった。何故?残された妻は気の毒だと思ったけど。

2018/07/22

ソングライン

作者の読売新聞連載中の小説がとても面白く、本作を読んでみました。女性の主人公からみた家族の風景が簡潔な乾いた文章で描かれ、薄れていく夫婦、親子の絆が浮き彫りにされていきます。虐待の後に訪れる幼児の切ない安らぎに作者の怒りを感じる「ふらんだーすの犬」、老いたと思った母の存在感にふっと気づく娘を描く「白菜」が印象に残ります。

2018/03/27

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