シャガールと木の葉
シャガールと木の葉 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
谷川俊太郎74歳の詩集。今回の基軸は2項対立だ。人間の手になるシャガールのリトグラフと、自然の造形たる一枚のクヌギの葉。「カラダ」と「タマシイ」。しかし、それはけっして二元論にはならない。「いのち」と「ひかり」がそれらを統合するからだ。もう一つのテーマが「老い」。「老人たちはもう人生を問わない。―中略―あなたにとって私たちは大切でしょうかと」。痛切な問いかけだ。そして、この詩集には、いくつもの追悼詩が収められている。シュルツ、矢川澄子、石垣りん―谷川の哀惜の歌は、深い生への共感をこめて、哀しくも暖かい。
2014/03/03
新地学@児童書病発動中
やっぱり谷川俊太郎の詩は素晴らしい。喜び、哀しみ、切なさといった人間の感情を、新鮮なものとして、もう一度胸の中に呼び起こしてくれる。毎日の生活で擦れ切れかかった心が、新しくなるのを感じるのだ。この詩集の中には、同じ詩人たちへの追悼の詩が含まれており、読んでいて涙が自然にこぼれた。特に盟友だった川崎洋氏へ捧げる詩は、この詩人の本質を掴んだ内容であり、亡くなった川崎さんも喜んだと思う。
2016/09/02
sin
詩の言葉が頭の中に静寂を生み出すほどに 耳鳴りが強く意識されて 詩の文体を眼で追うごとに 余白を飛蚊症のごみ屑が舞っている 詩が描き出す人の有限 魂の無限はやがて来る日を暗示するが 今日も呑もうと企む心は抑えられないでいる 来年の今日という日に迎える還暦も まるで他人事のような別の今日に 一瞬一瞬のうちに消えていくいまを感じる 五十九回目の誕生日…
2016/10/13
lonesome
言葉、音楽、本、星座。生きること、そして死。自分は自分の伝えたいことを上手く話すことが苦手なようだ。だからその代わりに文章に頼ろうとしてしまう。この詩集の石垣りんさんへ宛てた「石垣さん」という詩を読んで、自分はどうだろうと考えた。谷川俊太郎さんはどうだろうか。本物の谷川さんに興味がわいてきた。人がひとりひとり星でその繋がりを星座と呼ぶ表現がとても好きで、距離を星座に例えた谷川さんは流石だなと思う。
2015/01/10
寛生
【図書館】「自己のなかの分裂と言語のなかの分裂」という表現を水村美苗から借りるならば、その分裂の深き淵の静寂に自らの身を置き、その静寂の呼吸の鼓動と自らの息づかいを合わせていき、はじめて一つとなる音が詩というコトバとなっている。赤ん坊はこの世に生れ落ち、年寄りがあの世に旅立つ命の廻りのなかで、子どもが宇宙の沈黙の声に魂のチューンを合わせて眠りにつく。その眠っている子どもの心臓の鼓動の声が響く。木が切られ本となり、本が灰になる過程で、本の魂と人間たちの魂は、手と手をとり、その愛撫の中で果実を実らせていく。
2014/09/26
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