異国の客
異国の客 / 感想・レビュー
踊る猫
政治や文化、文学や人生をめぐって良きにつけ悪しきにつけ実に冷徹かつおだやかに筆は運ばれる。ぼく自身も含めて、政治的なトピックを語る際はともすれば情念をむき出しにして・敵対心丸出しの姿勢になりがちだ。だが池澤の場合は言うべきところにNOと言いつつ、最大限の譲歩を行うフェアネスを貫こうとする姿勢が頼もしい(だがそれが故に、彼の姿勢は優等生的な高みから立った態度とも受け取れる。「譲歩」なんてのは「エリート」「インテリ」の所作とも解釈できるからだ)。ここまで果敢に「物申す」危険を冒すその動機はどこにあるのだろう?
2024/09/01
sibasiba
池澤夏樹さんの文章は相変わらず心地良い。2004年9月から2005年6月フランスでの生活のエッセー。路面にチョークで描かれた魚やベルリンの記念碑やデモのことなどが語られる。なるべくフランスと日本を比較するまいと思っている、とあったけどいやいや十分比較してるよ。池澤さんの日本に対する意見には肯ける所も首を傾げる所もあったが「カジュアルなファシズムのようなもの」という文章がとても印象的。
2014/03/20
ふう
池澤さんの視点に共感し、刺激を受け、紹介された本が読みたくなった。書かれた2005年というときならではの文章なのに、今まさにそれが問題、と思えるようなテーマがたくさんあり、視点の確かさに驚かされる。グローバルとローカル、高校生のデモ、移民の話はまさに今大問題。興味深く読んだ。
2015/09/26
ジュースの素
2004年頃からフランスに住み始めた著者の まず住いと近郊の具合を紹介する形。 まぁ、池澤氏特有の緻密な込み入った話もたくさん混じるけど。 しかし、古い街だから駐車にはホント困る。子供を親が学校に送るので大渋滞が起きる話や様々なのだが、日本人個人のメンタルによっては それが我慢ならなかったり許せたりするんだろう。フランスはそれよりも「食」を選んだとある。食べ物のおいしさにかけては文面からも十分伝わってきて そうだろうなぁと納得させられる。
2015/04/12
アマヤドリ
初めての池澤夏樹さん。異国にいるということについてしばらく前からこころに留まっていて(須賀敦子さんやジュンパ・ラヒリ、アニルの亡霊やサーカスの息子)手にとった。私が今求めていたものとは少し違ったが、小説もエッセイももう少し読んでみようと思う。ドイツのホワイトアスパラを食べ損ねたことを思い出した。
2009/03/28
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