箱根強羅ホテル
箱根強羅ホテル / 感想・レビュー
ヴェネツィア
2005年5月初演の井上芝居の脚本。時は第2次世界大戦末期。陸軍、海軍、外務省それぞれの思惑が渦巻く中での物語。基本的には井上の一連の反戦演劇なのだが、この作品ではシリアスの度合いは薄く、本土決戦を叫び、あくまでも戦争を遂行しようとする軍部のバカバカしさをコミカルに描く。時代の趨勢に翻弄された箱根強羅ホテルが、東急からロシア大使館、そして占領軍へとその支配権が移って行くのだが、そうした歴史や時間感覚はよく伝わってくる。一方で、井上芝居に私たちが期待する哀切さや、独特のペーソスといったものには欠けるようだ。
2013/08/18
野のこ
「世界一のホテルに、我が国唯一の武器に?」舞台は第二次大戦末期。一流のホテルの人になるには勉強するべきと、このホテルに集まった少々アヤシゲな人たち、その正体は。クスリと笑うところもあるけど、なんとも切なくなりました。たくさんのうたが詰まっている。暗号のうたもあったな。食いしん坊なので召し上がれのうたが好き。とてもテンポが良くて一気読みでした。
2016/12/30
いのふみ
人物関係の交雑、隠された背景、おばちゃんの奮闘、テロ未遂のしょぼい結末など、面白く読んだ。単なるドタバタ喜劇でなく、戦時体制や戦中の軍事作戦を反省・批評するラストシーンが重要であると思う。つまり、単に「壊す」のではなく、再度「組み立てようとする」という行為。さらに執筆の背景には、国家の目標よりも、何より市井に暮らす庶民の感覚・生活をもとに考えていくことが大切、という考え方があると思う。
2019/05/09
Masa
井上ひさしの戯曲、『夢の痂』は筋を知っていたから舞台情景を想像しながら読んだが、こちらはそうは行かなかった。戯曲はどう読み込めば良いのだろうか?役者になった積りで、かな?強羅ホテルに集まったスパイの面々、陸海軍のスパイは和平交渉を潰そうと画策するが、米国での、中国での日本臨時政府の樹立の動きを知り撤退、というお話。日本の戦時政府が拘った国体とは何だろう。この拘りさえ無ければ沖縄・広島・長崎の悲劇も無かったはず、と思います。
2024/01/09
葛
著者:井上ひさし 2006年2月10日第1刷発行 発行者:加藤潤 発行所:株式会社集英社 印刷所:大日本印刷株式会社 製本所:加藤製本株式会社 初出:「すばる」2005年7月号 2005年5月19日〜6月8日新国立劇場中劇場 演出:栗山民也 出演:辻萬長、麻実れい、酒向芳、内野聖陽、段田安則、大鷹明良、藤木孝、中村美貴、吉田舞、平澤由美、梅沢昌代 音楽:宇野誠一郎 美術:堀尾幸男 照明:勝柴次朗 音響:山本浩一 衣装:前田文子 演出助手:北則昭 舞台監督:増田裕幸 制作担当:古川恒一、茂木令子
2021/01/07
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