ピカルディの薔薇
ピカルディの薔薇 / 感想・レビュー
藤月はな(灯れ松明の火)
私にとって夏に読みたくなる本の一つ。そして和歌山オフ会に参加した時に『蘆屋家の崩壊』の紹介に紛れてお勧めしたのが、この本に収録されている「フルーツ白玉」でした。再読すると終盤での伯爵の指摘は、今のインスタ映え風潮を痛烈に皮肉っているようにも思える。同時に無意識に彼女が求めたフルーツ白玉の思い出が何とも切ないのだ。表題作については彼女も叔母と同じ轍を踏んでしまったのは業なのか・・・。「夕化粧」はおしろい花の粉を塗って自殺した晶子さんの、女性の夫とその浮気相手への沈殿した凄絶な恨みに呑まれそうだ。
2018/07/06
kowalski
いやぁ~面白かったです。読んでいるうちに引き込まれていて、なんか悪い毒に刺されたような感覚で面白かったです。独特の雰囲気のなかで淡々と進んでいくところも良かったですね。個人的に「夢三十夜」が好きなのは、やっぱり悪い毒に刺されたせいかなぁ(笑)
2012/09/06
れみ
前作ではフリーター(?)だった猿渡がここでは作家になり、再び不思議な事件に遭遇する短編集。伯爵とのコンビでの雰囲気が好きだったけど、あんまりそういうお話がなかったのはちょっと残念だなあと思いつつも、それぞれのお話は面白かった。とくに食べ物が登場するお話が好き。
2014/02/23
風眠
たとえば曖昧模糊な何かが、いつの間にか背後にいるような、あやふやで捉え所のないゾワゾワ感。まるで「これは夢だ」と思いながら見ている夢のよう。静謐でスマートで無駄のない文章は、すらりと鮮やかに時空を超える。国を超え、時代を超え、まるで私たちを煙に巻くみたいに。死んでも残る女の情念、五感を失くした人形師の壮絶な作品、聖女の伝説が残る島、ありとあらゆる食に対しての執着、人生を「お試し」できるウクレレの音色、そして主人公の祖父が見た満洲。美しいけれど、どこかユーモラスで、裏と表を同時に見てるみたいな短篇奇譚集。
2014/02/04
あじ
作者に贈りたい賞賛の言葉を持ち合わせていない私は、歯痒さを抱え幻想の淵に取り残されてしまった…。全編通して登場するのは“猿渡”という人物、作家三浦しをんさんが溺愛する男性だ。耽美の温床に足を取られ、深みに嵌まる罠が仕掛けられている。シリーズ第2弾です。
2016/10/29
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