でかい月だな
でかい月だな / 感想・レビュー
ちはや@灯れ松明の火
月を見つめていた。まだ、一瞬にして全てを失う現実など知る由もなく。右足の自由、バスケットボール、そして友達。当たり前に日常に存在していたものが手の届かない遠い過去に流れ去り、代わりに埋まらぬ空白と非日常とが残される。自称錬金術師の天才少年、毒舌家の眼帯邪眼少女、空を泳ぐさかなキャラバン、全体思想的やさしさの蔓延。罪と罰と赦し、行き場のない怒りや哀しみや孤独、全て放り出して眠っても消え去ることなどないと、分かっているのに。項垂れる顔を上げれば、同志のように、紺碧の空に溶け込まず凛と漂い浮かぶ月。
2010/04/04
BlueBerry
犯罪被害者(家族も含めて)と加害者のことや少年犯罪のことなどがメインテーマのお話でした。「大好きだったバスケが一生出来なくなったのにそんなに簡単に許してしまえるものだろうか?」犯罪を犯した理由(大事な物は壊したくなる)も私としてはありえない。作者の理想の結末だろうけれど私としては色々と微妙だったのでスッキリしない読後感でした。
2014/03/11
あつひめ
水森さん初読み。小説すばる新人賞受賞作だそうだ。一番心が透明で透明が故にすぐに濁ってしまうような世代の少年少女。親友から殺されかけた主人公。でも、それが夢だったかのように相手を恨むこともなくただただいい人として時間を費やす。それは被害者意識が周りに与える影響を考えてとかそんな面倒なものじゃない。加害者の親友が本当に好きだから。人を信じるってすごく勇気がいるし、守れない約束のためなら大切なものを壊してしまいたい衝動というものが生じることもあるのか。自分のやりたいものを心に浮かべて涙を流せる、青春物語だ!!
2011/05/03
くろり - しろくろりちよ
「でかい月だな」親友に崖から突き落とされて。周りが親友を憎むから自分は憎めない汚れた世界にいるから世界がキレイであればいいと思う。そこに訪れた「やさしさブーム」。「幸せな世界が大嫌いだったんだ」幸せの背景はいつも不幸。「…はきっと誰よりもやさしい。だけど悲しいくらい間違っていて、しかもそれを自分で熟知している」真実の残酷さ。「死後の世界を欠片も信じないということは、天国に向かって赦しを請うことすらできないってことなんだ」やさしくない、失ってみないとわからない世界で、壊さなくても永遠になる大切さを求めて。
2012/03/28
ちろ
被害者になってしまい、心の中にできた大きな穴を埋められずに葛藤するユキが切なかった。そして加害者の綾瀬の想いも。2人の今後がすごく気になるなぁ。いつか屈託なく笑いあいながら尺玉を打ち上げる日が来るといい。それにしても。中川かっこよすぎ。出てくる言葉がイチイチ私のツボだ~。そして、かごめとユキの掛け合いが面白くてやけにほのぼのした。この3人、絵に描いたような一方通行の三角関係に思えて仕方ない…w想像以上に面白い本で大満足。図書館で借りてきちゃったけど文庫買おう。
2010/08/18
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