映画篇
映画篇 / 感想・レビュー
chiru
『ローマの休日上映会』が短編をつなぐ、フィクションが誰かを救う物語。 辛い現実から目をそらすように映画で繋がる少年たちの『太陽がいっぱい』と、映画というテーマを象徴する物語『愛の泉』が大好き。 祖父の一周忌、元気のない祖母を元気づけようと孫たちが立てた計画。 それは祖母と祖父の初デートで見た映画を、市民会館を貸切にして祖母に大スクリーンで見せてあげること。『ニューシネマパラダイス』を鑑賞したような感動と、笑って泣ける演出が、奥行きを生み出した傑作。 映画という宝物の持つ力に夢中になった一冊です。 ★5
2018/11/03
Shinji
いやぁ、いい気分になりましたね!見事でした。作中に出てくる映画を全部知ってるわけじゃないですが、ある程度の知識でも目いっぱい楽しめました。今の時代VODやレンタルなんかで好きな映画をいつでも観れるんだけど、やっぱりスクリーンは違いますよね。友情、喪失、葛藤、そして愛情…辿った道は全く違うけど奇跡が舞い降りていましたね!「恋のためらい/フランキーとジョニーもしくは トゥルー・ロマンス」が好みですが、全ての道がローマに繋がったので、全章通して大満足の連作短編集でした!オススメです!
2019/01/20
ゆりあす62
図書館本。★★★★☆ 公民館で上映された「ローマの休日」。その上映にまつわる人々の5つのお話。主人公達は変わっていく現実に、逃げられない自分を暫し映画の世界に解き放つ。創造は誰にも縛ることはできない。どこまでも自由なのだ。「太陽がいっぱい」の章の少年たちは言う、「リプリーは捕まってはいけないのだ」と。
2017/02/27
有
夏の毎日は忙しなく過ぎていったけど、この本を読んでいる時だけは、優しい時の流れにいた。たくさんの本と本が、私をすり抜けていく。文章を追って、見るだけ見て、手に入れた気でいた。でも、気付いてしまった。いつの間にか無くなってた。ひとつの物語で笑ったり泣いたりする、そんな単純なことが。何のために私は本を読んでいた?一文一文、一瞬一瞬を大切に、丁寧に生きるのではなかったか。まだ私にも、物語を楽しめる気持ちは残っているだろうか。物語に浸って、過去や未来を思うことが許されるだろうか。なんだか今は無性に、映画が観たい。
2014/08/29
名古屋ケムンパス
素直に「読んで良かった」と云える作品です。映画「ローマの休日」を綴じ糸にして結び付けられた五つの短編集。自らの境遇に対する葛藤、悲しい過去との決別、いじらしいほどの恋心、内なる復讐心、そして絆。若者たちの目が真っすぐににこうした現実を見つめる様子が丹念に丹念に描かれています。最終章「愛の泉」では、連れあいを亡くしたおばあちゃんを支えようとする孫たちが優しくて、温かくて限りなく素敵です。読み終わって改めて扉のページのオードリー・ヘップバーンの笑顔が際立って優しく感じられます。
2015/08/27
感想・レビューをもっと見る