南海の翼 長宗我部元親正伝
南海の翼 長宗我部元親正伝 / 感想・レビュー
Tomokazu Kumada
渡来系の秦氏を祖に持つ四国は土佐の「長曽我部」家の若き当主「長曽我部元親」は、容姿と書物好きの様子から“土佐の姫若子(ひめわこ)”と呼ばれていましたが、長曽我部家と本山家との戦での初陣とは思えぬ活躍から“土佐の鬼若子”と呼ばれる様になり、父の病死により家督を相続します。亡き父の悲願であった土佐を平定し更に版図を拡げ四国統一を成し遂げますが…、親と子・主君と臣下・民と暮らし・光と闇・孤独と苦悩・身内の粛清・後悔・迷い・狂気と執着・繁栄と衰退、徐々に衰退していく長曽我部家の興隆から滅亡までを描いた戦国史小説。
2013/05/11
ちょん
大好きな武将である長宗我部元親、盛親親子。元親の優しいが故に壊れていく晩年が詳しく書かれていて興味深かった。身内を殺していく時代の惨さ、人間の心が失われていく様子が怖い。もっと彼らの歴史を知りたくなった。
2013/10/24
ひろ
「長宗我部元親イコール四国の覇者」という表面的な印象しかなかったけれど、物語は英雄譚というよりも悲劇というべきで、後悔と挫折だらけの武将だったことが窺える。特に長宗我部家の減衰に至る過程や、晩年の元親の心が崩壊していく様は、ひたすら暗澹冥濛としており項を捲るのさえ息苦しく感じた。史実はどこまでも残酷で、敗者には容赦なく刃が突き刺さるが、そこには深い人間ドラマも。終章、大阪の陣での盛親の最期が非常に印象的で、物語に静かな余韻を残す。
2014/07/23
detu
長宗我部元親。四国の覇王と言っても本能寺の変の後のホンのつかの間。前半快男児、後半不運の武将。戦国の世でなかったら、土佐という遠隔の地でなかったら。元親自身は四国統一だけで良かったのだが、そこが中途半端なのか。信長無き後、太閤秀吉の天下に外様大勢力は邪魔にしかならない。司馬遼さんの『夏草の賦』を照らしながら読んだ『夏草』にはあまり出てこなかった武久親直の真実はどうなのだろう。斬新な解釈の元親像と歴史感。特に本能寺と九州征伐のくだりは斬新的で面白い。長宗我部の思いは明治維新へと繋がっていく。面白かった。
2021/02/18
おやぶん
桃山ビートトライブなどでフィクション的な歴史小説かと思って 読んでみたらこちらはある程度史実に沿った長宗我部元親の物語。 ただ淡々と史実にそうわけではなく、 かなり内面に切り込んだ物語になってたり 英雄と言われる裏でかなり冷酷で汚い事をしていたなど 単純な戦国の戦いものではない内容でした。 元親とともに壊れて行く久武親直が 長宗我部家に献身的に尽くしてきた結果として 凄惨なことが起こったシーンはほんと救われないと思ったな。 四国統一の夢に破れ、さらに最愛の長男を亡くした元親も悲しすぎますな。
2014/10/18
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