清盛
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清盛 / 感想・レビュー
文句有蔵
清盛の話は、これまでにもさまざまな作家のそれぞれの作品を読んできた。どの話を読んでも、頼朝を殺さなかった点が納得出来なかった。しかし本作で初めて合点がいき、膝を打つことになった。自分の生い立ちとの相似からくる自己憐憫ともいえる感傷、そして自分を平家の棟梁たらしめた池禅尼の功労に対する忠誠心。さればこそ清盛は頼朝の首を刎ねなかったのか!作者あとがきに本書を「評伝」と記してあるが、勝てば官軍でこれまで敵役としてしか描かれていなかった清盛の生身の姿には唸らされる。傑作。
2014/08/07
かわかみ
王朝国家の体制が爛熟し限界に達した頃に、平清盛は生まれた。複雑な生立ちゆえに生じた父や弟との確執や、武士という貴族の下の身分に悩みながら、自分の生きる道を模索した青年時代。そして、父忠盛が築いた平家の軍事と経済における実力を背景に、魑魅魍魎と権謀術数の渦巻く都でのし上がった壮年期。さらに、武家として前例ないまでに栄華を極めた後に、自壊する王朝国家とともに平家が滅びる姿を見ずに逝った戦い続きの生涯であった。新たな武家による政治のありかたを、福原遷都について諮問された大江広元に語らせているが清盛は行き着けず。
2021/10/10
Waka
1年ぐらい前に読んだ時はおもしろかった印象だが、今回読んで、大変もの足りなく感じられた。本人も書いているが、もちろん専門書ではない。かといって、小説としておもしろいかというと……。伏線の貼り方が上手くないのかな。「あの人は数年前に死んだのだが」みたいなのがたくさんあって……。父子の確執を描きたかったのだとしたら、それはある程度は成功したのかなと思うが、これももっと突き詰められたと思う。なんにしても、不完全燃焼。
2019/10/12
りー
丁寧に書かれた清盛でした。その分、説明的すぎて歯切れが悪い、とも感じましたが。・・・時代のドロドロさを改めて実感。教科書では教えないけど、清盛の母が、祇園女御の妹っていうの、ほぼ定説なんですね。白河院と後白河院の多淫さが怖かったです。バイセクシャルで、血族婚もあり。で、女が孕むと下げ渡すって・・・。清盛も常磐でやったわけですが。清盛という人が単なる武家の棟梁では無かった、と思って見ると、全然見えかたが変わってきます。院政の開始は後三条帝から始まり、そこに大江匡房が関わっていた、というのも初めて知りました。
2018/07/01
Waka
大変興味深く読んだ。保元平治の乱の関係者の動きのいまいちわからなかったところが、だいぶ理解できた。 小説としてもおもしろいほうだと思う。 「この伏線はもっと上手く配置すれば好いのに」「これが伏線だといま言ってしまわなくても好いのに」というところはあったものの、全体としておもしろく拝読した。 ただ、小説中の人物の親子関係と付属の人物相関図に1箇所食い違いがあった(藤原育子の父)。 調べると、両説あるとのことで、小説で採用された説のほうが有力とのこと。 ならば人物相関図もそちらに統一すれば好いかと……。
2018/09/30
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