ロスト ターン
ロスト ターン / 感想・レビュー
やすらぎ
嵐が過ぎ去り、果てしない大海で迷子の鳥と喪失の老人が出会う。居場所を失ったら生きることは困難であり、流されるしかない。…明るい時間より暗がりのほうが、物事を考え理解するために向いているだろう。闇の深さが、よりはっきりと心にイメージを浮かばせてくれるから。…ここが今夜の最高の場所さ。慌てて何かを探すことなんかないんだ。急いで答えだけ求めてもしょうがない。大事なものを見つけるにはそれなりの時間が必要さ。次に進む道はいずれ見える。誰かに出会えば新たな人生が始まるさ。…この手でつかむことのできない未来こそ美しい。
2021/08/15
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
自分の居場所をなくしてしまった海鳥ターンと老人の魂の交流。嵐に巻き込まれて迷子になった海鳥は、故郷への帰り道を探す。家族を亡くした老人はターンとの交流によって死んでしまった心を取り戻していく。ターンが帰っていった故郷は、すでに迷子になる前の場所と同じではなかった。世界に存在するものは一瞬として同じままではいないから。それでも構わない。海岸線で老人とターンが過ごした足あとは、あっという間に波でかき消えても、彼らの物語が失われることはないのだ。全てが美しい本。考えるより感じれば良い。2005年5月初版。
2016/01/06
NAO
わけもなく嵐の中に飛び出してしまい、自分の居場所を見失ってしまったアジサシが、自分の居場所をみつけだすまで。同じように居場所を失くしてしまった老漁師とのふれあいが温かい。前作『リトルターン』と同じく、やさしい挿絵に癒される。
2020/06/28
翔亀
前作「リトル・ターン」は飛べない状態から自己を<回復>する物語だったが、今回は迷子になったコアジサジ(Little Tern)が、ホーム(故郷)を<探し続ける>物語だ。「カモメのジョナサン」とは違って、飛ぶこと自体の進歩を目指すのではなく、ホームを探す過程で様々な生物と出会うことで人間的(鳥的?)に成長する。ここでヒト、アオサギが生物として同格であり、出会いの距離感が絶妙なところが秀逸だ。ついにホームに戻るが元の仲間に合流するわけではない。ホームとは場所でも血縁でもないのだ。永遠に探し続けるものなのだ。
2015/02/26
hirune
生きるべき場所を見失ったアジサシと老漁夫の出会いと魂の触れ合う交流が哲学的でちょっと難しいけれど、とても心に滲みます。共に厳しい冬を乗り越えるため寄り添って生きたアジサシとオオアオサギの友情も素敵でした。滲んだような挿し絵も雰囲気が良くて好きでした☆
2020/09/07
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