父の暦(谷口ジローコレクション)
父の暦(谷口ジローコレクション) / 感想・レビュー
ぐうぐう
「谷口ジローコレクション」で再読する『父の暦』。急逝した父の通夜に出るため、十数年ぶりに郷里である鳥取へと帰る主人公。そこに集まった人達の思い出話を聞くうちに、父との間にできた深い溝が少しずつ埋まっていく。それは、遅すぎたかもしれぬ父への理解へと主人公を導くのだ。谷口の画のうまさはもはや言うまでもないことだが、例えば、主人公が子供時代を回想し、その中で思い浮かべた若き伯父が通夜にも顔を出している場面。若かりし頃の伯父が年齢を重ね、老いた顔がそこにはある。(つづく)
2021/11/06
くさてる
ある程度以上の年齢となり、父や母を送った、あるいは送ることにリアルを感じ始める年代の人間にとっては、ずしんと重い一冊。谷口ジローの美しくも端正な描線で丁寧に綴られる、どこにでもある地方の少年の成長物語。けれどそのなかに常にある「父」、飼い犬の存在。感動作と片付けるのはちょっと待ってほしい。これは確かに感情を動かす作品だけれど、同時に苦しいほどに誠実な著者の姿勢と、強大な漫画力で成り立っているマンガ作品だ。その完成度の高さに打ちのめされた思いです。
2022/06/06
ムーミン2号
とあるきっかけから故郷(鳥取)を飛び出し、東京で就職し、結婚している陽一が、父親の死により久し振りに故郷に帰り、通夜の席で陽一の知らなかった父親のことを次第に知っていく。そこには子ども(陽一)の知らなかった親の気持ち、心遣いなどがあり、父親へのわだかまりも少しずつ解けていくようになる。読み応えのある、またしばらく期間をおいて読み返したいマンガ。
2024/03/02
ひめぴょん
初出は1994年の連載。大正5年生まれの父親の死(76)によって浮かび上がった父の実像、父のやさしさを知る物語。父親と長男の関係が淡々と描かれています。お互いの気持ちが通じ合わないもどかしさを感じながら、読了。「都会はわずらわしい家族の絆から逃れる事のできる場所」と都会に出た切りほぼ郷里に帰らなかった陽一に厳しいことを言わず温かく迎える人々。人の気持ちがなかなか通じ合わない現実に意地を張らずにどこかで折り合えたら良かったのにと思いました。陽一と私の父が同世代なのかと思いつつ、父から聞いたいろいろな話と時代
2022/09/29
kentaro mori
●郷里は••••••いつでもどんな時にて変わらずそこにあった。/私は思う••••••郷里に帰る••••••のではない、いつの日か郷里がそれぞれの心の中に帰って来るのだ。
2021/12/16
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