遥かな町へ (ビッグコミックススペシャル)
遥かな町へ (ビッグコミックススペシャル) / 感想・レビュー
keroppi
ブックオフで購入し積読のままだった。48歳の中年サラリーマンが14歳にタイムスリップする。誰もが一度は想像したことがあるのではなかろうか。もう一度あの時代に帰ってみたいと。それを見事な描線でリアリティたっぷりに描き出す。心と体のアンバランスが、様々な体験を生み出し、思春期のときめきを感じたりする。失踪した父の心模様と現実から逃げようとしている自分の心情の対比から、過去へのノスタルジーと今この時の大切さがひしひしと伝わってくる。タイムトラベルものとしても良作であると思う。
2023/10/22
たかやん
人生に疲れた中年男性が14歳にタイムスリップ、それは丁度父親が謎の失踪を遂げた年だった…。単純にタイムトラベルものが大好物ということで購入するも、とんでもなく大人な漫画だった。忙しい毎日に埋没すればするほど、まるで人生は1本道かのように感じがち。それが何らかのきっかけで、ふと立ち止まったとき、見えなかった道の存在に気づく。ただ気づいたところで、自分の肉体が1つである以上選べる道はひとつ。無数の見えない道を意識しながら、1本の道を歩いていきたい。
2017/12/29
J7(読メ低浮上中)
こんなことを書くとかえって安い感想になってしまいそうですが・・泣きました。『孤独のグルメ』の谷口ジローさんの傑作として名前を聞いていた作品だったので興味があったのですが、読んでみると間違いなく名作でした。14歳の中学時代にタイムスリップした40代の中年男が、もう一度青春をやり直す一方で、かつて失踪してしまった父の真相を突き止めようと奔走する。人生をやり直す、特にある程度年齢を重ねてからは自分の十代を思い出して、そこに戻れるというのは妄想だったとしてもとても魅力的なことだろうと思う。(→)
2017/02/28
あきあかね
「自分には、他にもっと違う生き方があるんやないか、思うてな···」 中年の主人公はタイムスリップで、14歳の頃の世界に迷い込み、その年の夏の終わりに家族を置いて失踪した父を止めようと画策する。 夜の鳥取の小さな駅。去ろうとする父を待ち受け、主人公は最後の説得を試みるが、時の流れは変えられるのかー。 学生の頃、冒頭の主人公の父の台詞の意味なぞ分からなかったが、二度と巡ることのない無数の選択を重ねてきた今は、その言葉の重さ、哀しさが分かる気がする。 繊細な筆遣いによる心理描写は、小説を凌駕している。
2019/02/13
阿部義彦
原作者無しの所謂谷口ジローオリジナルによる漫画の代表作と云われる作品です。本作は欧州で紹介されアングレーム・マンが祭(仏)をはじめ、欧州の三大コミック大賞を受賞し、映画化もされたそうです。主人公が今までの記憶を持ったまま過去にタイムスリップして入れ物である身体は子供時代で有ると言う、良くある物語原型では有りますが、その細かい描写力が読者まで自然にその時代に引き込みます。瓦屋根、板葺きの家屋、自転車、スーパーカブ、茶の間などの昭和の風物詩。結局未来は変えられなかったが、自分の新たな軌跡の爪痕がラストに!
2024/01/14
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