零落 (ビッグコミックススペシャル)
零落 (ビッグコミックススペシャル) / 感想・レビュー
ケンイチミズバ
才能が評価されないことがそんなに苛立つのか青いなと思った。そんなことは日常いくらでもあります。死んでからしか認められなかった天才もいるくらいだし。世の中は凡人と庶民とタケシさんの謂うところのバカで動いている。マスにすり寄ることは決して恥じではない。驕りで自滅していく才能と乗り越えて輝く才能とあるが、輝かないまでも当面の生活との引き替えに妥協を選んだか。満たされない思いで風俗に通い、知り合った若い女の田舎にまでついて行く。同級生たちと比べて未熟で大人げないぞと思った。甘えだな。
2018/01/04
Vakira
「零落」って単語この漫画で初めて知る。浅野いにおは、読友さんの感想から「おやすみプンプン」を知り自分の蔵書に。それを息子が勝手に読み、感動、いにおのファンとなる。今回 この本は息子のお勧め。っで、借りる。純文学漫画。作家の苦悩は太宰治では自虐ネタで「人間失格」だが、この作品では自虐しつつ、他人に「化物」と言われてしまう。「化物合格」。 作品と作家本人の思いは違う。読者は作品で感動し作家を尊敬する。しかしその作品は売れるためであって、作家の本当に作りたいものは違うのもだとは知らない。創作者の苦悩。
2017/12/31
澤水月
若くお洒落な感性きらめく大人気作連載が終わった漫画家の息詰まる日々描く「私漫画」(でいいだろうこれは)。「あと10年したら50歳」…! こじれたアシの方が売れ出す、漫画家と編集者/男より仕事うまくいく女…を巡るリアルなやりとりなどこの著者がこういう「生活実感」描ききったことに驚き。かつての自分の「残念」全て晒し…さあこれから。創作者誰もがそうであろう恍惚と戦慄とに対峙し、突き抜けるのか? 正直これまでの作はそう好みでなかったが俄然今後を読みたいと思わせられた。
2017/11/04
うめ
受け入れられる悦びに、期待される苦しみ。数十年生きて来るとこの漫画に描かれた言葉がひしひしと分かる。自分は大きいのか、小さいのか。世の中や人は舐められるのか、私が馬鹿にされているのか。オセロの様に好きも嫌いも、良いも悪いもパタパタ節操無く白黒容易くひっくり返り、盤上の勝敗はなかなかつかない。人は誰でも、真っさらな子どもでもない限り、鬱屈し、歪で、それをひた隠しながら画一に寄せて生きている。自分の中にもある歪さや醜さを突き付けられたら"怖く"なる。怖いと、感じられるなら、まだその歪は軽傷なのかもしれない。
2018/04/12
ちぇけら
愛しかたはもうわすれてしまった。寝言はもう言い飽きた。素敵な漫画を読ませてくれないかい?1ミリたりとも嫉妬しないような中身のない陳腐なストーリー。安ホテルで抱いた猫目の君の形に世界は少しだけ窪んでいる。ぼくには君しかいないんだと幾人にも言った。つまりぼくの心には誰もいなかった。ぼくは何もわかってやれないし、誰にもわかってもらえやしない。そんなピンボケした世界で、無料案内所のネオンサインだけが眩しかった。「自由は手段であって/目的であっては/ならないのだ、」ぼくは黒いカーテンをくぐるたびに、醜くなっていく。
2020/09/26
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