夜の三部作 (P+D BOOKS)
夜の三部作 (P+D BOOKS) / 感想・レビュー
momo
「冥府」「深淵」「夜の時間」からなる三部作。全く異なる物語であり、表現方法も異なります。生と死、人間の奥深い内面が描かれている点が共通しています。「深淵」はいつも手もとに置き、何回も読みたい大変な傑作です。自分に正直に生きようとすることがいかに孤独であるのかを考えさせられます。また、人を愛することで自分の行き場がなくなることも二人の語りにより伝わってきます。構成も見事です。「夜の時間」は怖い小説です。人間の心の奥底が露呈すると、こんなに恐ろしいのだと実感します。夜中に本作を読み終わり眠れなくなる程でした。
2020/04/05
冬見
【冥府】死後の世界「冥府」。そこを彷徨うもの全てを対象に、法廷は開かれる。新生か却下か。新生となればその者は冥府の記憶の一切を剥奪され、秩序へ送り込まれることとなる……。時間と空間は茫洋とし、世界はぼやけたフィルターがかかったように曖昧で掴みきれない。読んでいる私もまた、彼らの幻視した過去へ引きずり込まれ、そして、突き放される。呆然と立ち止まる暇はない。僕らはこの世界を歩き続ける他に道はないのだ。秩序の世界では「生」と「死」を自分の意志で選び取ることができる。しかし冥府では、「死」を選ぶことができない。→
2019/04/26
ゆかっぴ
三作を通して「生きること」と「死ぬこと」を考えさせられるようでした。うまく言えないけれど、自分なりに濃密な時間を生きていきたいと思いまいした。
2016/10/21
nightowl
幻想文学?と思いそうになる初めての福永武彦。表面上は日常的な風景なのにどこを取っても死を感じる世界で生まれ変わるための裁判が唐突に繰り広げられる設定がそれっぽい「冥府」、己の飢えた感情に溺れる男と彼と密通した懺悔を語る女「深淵」、結核で自宅療養をする娘がかつて付き合っていたらしき男女を再びくっつけようとするも二人にはつらい過去が「夜の時間」。「深淵」は女性の情念を薄めにした皆川博子作品のようだし、「夜の時間」は娘の無自覚な悪意が北村薫のヒロインを思わせる。そして収束のきっかけが幻想的。滑らかな文体も好み。
2016/12/02
ロックスターKJ
評価:★★★★☆ 4点 池澤さんの解説もいいです。
2016/12/26
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