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廃市 (P+D BOOKS)

廃市 (P+D BOOKS)

廃市 (P+D BOOKS)

作家
福永武彦
出版社
小学館
発売日
2017-07-11
ISBN
9784093523073
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廃市 (P+D BOOKS) / 感想・レビュー

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藤月はな(灯れ松明の火)

ずっと、「廃市」が読みたかったのですが文庫版は絶版していた所、こちらの版で刊行されていたので購入。紙質が影響しているのか、大きな版にも関わらず、結構、リーズナブルな値段です。何故、当事者である彼以上に彼女達は「彼は妹/姉の方を愛していた」というのか。特に郁代の固執は『狭き門』のアリサの意固地さに気位の高さを足したように感じて不快な息苦しさを覚える程。彼女達の言を取ると彼の言が霞んでしまうという不可解さ。まるで愛している人に向ける愛は、結局は自分が信じたいものでしかないと言うかのように。

2018/05/01

冬見

【廃市】 青年Aは卒業論文を書くために訪れた田舎町で、地所の夫妻と妻の妹の三角関係に巻き込まれる。頽廃と享楽とが背中合わせに両立したその町は、旧弊で因習的な空気が圧倒的に強い"次第に滅びつつある町"だった。福永武彦の作品にはこういう町がよく出てくるが、本作では主人公である青年Aが事件に対しても土地に対しても最初から最後まで傍観者でストレンジャーであるからか、他の作品で感じた曇天の空に押しつぶされるような圧迫感はなく、その代わり、荒野に一人取り残されたような心許なさと呆然とした心地が胸に残った。

2019/05/15

桜もち 太郎

何だろうこの退廃的で静けさの中にもズキュンと胸を刺すような文体。あるのは退屈、倦怠、無為、ただ時間を使い果たしていくだけ。「廃市」では主人公の青年Aが夏に卒業論文を書くためにある街を訪れる。そこで三角関係に巻き込まれる話。美しい姉と快活な妹、そして姉の婿である直之の三者の微妙な心の揺らぎ。直之の死に唖然とするわけだが、その死さえも必然と思わせるような筆致はさすが。「退屈な少年」も良かった。運命との賭けにをするためにピストルを手にした謙二。病弱で哲学的で不安定な少年の心を絶妙に描いていた。短編6作品を併録。

2022/01/22

ホースケ

読書をしていると思いがけない出会いがあるが、その出会いに今回はすっかり打ちのめされてしまった。滅びゆく美しさを纏った表題作の『廃市』水のある風景の中、ひと夏の思い出が端正な文章で描き出されるさまに、ただ心を奪われた。美しさの裏にそこはかとなく漂う死の影。交錯する男女の気持ちと水辺の情景が、夏を忘れられないものにする。他『退屈な少年』もいい。 無邪気とも思える思春期の少年の行動に最後まで目が離せないが、思慮深い父や兄の存在が安定感を与えている。時代を感じさせる表現などはあるものの読み続けたい作家がまた増えた

2023/02/27

奏市

好きな作家の佐藤正午さんと中江有里さんそれぞれの本に『廃市』を取上げてあった為読んでみた。何故かハイイチと勘違いしていたがハイシ。その表題作含む6篇の短編集。表題作はタイトルから勝手に複雑で難解な小説と想像していたら、シンプルな筋であり綺麗な小説だと感じた。﨟たけるという語を初めて知る。以下好みの2作。『樹』幸福なはずが突然はっきりとした理由なく別れを切出す妻に呆然とする売れない絵描きの話。『風花』「風花のようにはかなくても、人は自分が選んだ道を踏んで生きていく他はないだろう」。こちらも妻が去ろうとする。

2022/02/10

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