花筐 (P+D BOOKS)
花筐 (P+D BOOKS) / 感想・レビュー
青蓮
大林宣彦監督が映画化した「花筐」が気になって手に取りました。泥臭いような血腥いような独特の雰囲気がある作品でした。十代特有の不安定な衝動、焦燥感が根底にあるように感じます。自伝的作品である「白雲悠々」「誕生」も興味深い。それにしても安吾がカレー100人前注文したとのエピソードが謎すぎる。行く末は元帥と臨まれたエリート幹部候補の青年を描いた「元帥」の心の闇の深さにはぞっとする物があり。南極捕鯨船への乗船体験を元にした「ペンギン記」はペンギン相手に右往左往する姿が何となくチャーミング。バラエティに富んだ1冊。
2018/04/08
かふ
大林宣彦監督の映画はけっこう膨らませていた。反戦の話はなかった。『ポールとヴィルジニー』に挿話も大林監督が付け足したものだった。語り手の榊山は凡庸な青年で肉体派(アポロン的)の鵜飼と観念的(ニヒリズム)の吉良が対になって、病弱のヒロイン美那と年上のエロスの叔母様の神話的な青春群像劇。構図は極めて対照的描かれている。短編なのに登場人物が多いが比較的理解は容易だ(映画を観たこともある)。鵜飼のアポロン性が全面に。美那を喪失した叔母様との海水浴のシーンのエロさ。海蛍に全身が覆われる。
2018/02/26
こるた
表題作『花筐』美しい言葉で表現された危うさとはかなさ。刹那の心の動きに、共感できるものがある。『ペンギン記』 “彼女”と過ごす作者の姿に、おかしみと少しの切なさがあり、いい。
2018/11/08
カナッパ、ユイッパ
友人のブログで映画「花筐/HANAGATAMI」上映館が少ないことをこぼしていたのが、この作品を読むきっかけとなりました。 この時代の作家の作品は、最近あまり読んでいませんでしたが、好きです。そのことを思い出させてくれる作新でした。 情報の荒波に身を置く現代の作家とは真逆で、情報源は複雑怪奇な自分自身。その情報源を分析しつくす私小説の素晴らしさ、分析により確立した思想に立脚した主人公が事の深層を抉り出すグロとエロが見え隠れする小説の面白さなど、多面的で魅力的な作品が揃った良書です。
2018/01/10
デニス
読むのがただただ苦痛だった。魅惑的ではあったけど登場人物誰一人理解できない。文章の美しさは感じられた。今読んだら印象変わるかな? 因みにその後映画も観た。やっぱりこの世界観は映像化が似合うなと思った。
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