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世界が生まれた朝に

世界が生まれた朝に

世界が生まれた朝に

作家
エマニュエル ドンガラ
Emmanuel Dongala
高野秀行
出版社
小学館
発売日
1996-11-01
ISBN
9784093560412
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世界が生まれた朝に / 感想・レビュー

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マリリン

認められなかった誕生のシーンから自然の中に宿る生命の神秘を感じる。アフリカの歴史や伝統・文化・物事の秩序の変転・根の異なる“知”・異界と境界を彷徨う魂等をマンクンクの生涯に内包させた作品は、宇宙の中に息づくアフリカという広大な世界を感じた。死しても継承される文字や言葉にならないものの魂。表題と表紙が秀逸。激動の世界を生き、孤独の中に魂の住処を求め生まれた場所に辿り着いたマンクンクの終焉から、普遍性の中に宿る歴史を生きてきた多くの魂の存在が眠る地から、繰り返される新しい世界の誕生を感じた。

2021/12/26

syaori

「《力》に挑」むもの、マンクンクの一代記。彼が生まれたのは、生命と大地を結びつける様々な法や儀式が支配する神話のような時代。大河に挑み、一族の因習や知に挑み、侵入してきた異人の知に挑みと、「《力》に挑」み続ける彼の人生を追う形でアフリカが西洋の国々のなかに組み込まれ、近代化していく過程の血なまぐさい歴史も描かれます。最後、彼の長い孤高の人生・世界の大きな円環が閉じるとき、きっと広い地球の様々な場所で、世界がこのように終わり、このように始まっているのだろうという壮大な思いに至り、静かな感動を覚えました。

2016/11/22

taku

この一冊にアフリカ諸国の近代史が閉じ込められている。伝統社会と因習、植民地支配、動乱や革命を経て独立。内容は重いが悲壮感漂うお話じゃない。小説として十分楽しませてくれる。〈知〉を求め〈力〉を理解していくマンクンクは破壊者ではなく挑戦者だ。彼とともに変化していく社会や新しい文化を体験し、苦悩や葛藤を共有している気にさせる。火の輝きと純粋な自然に満ちた朝、世界は産声をあげた。アフリカだけに留まらない普遍性を潜ませた世界文学。

2019/01/10

みねたか

大きな社会変動の中で人の生涯を描く。文字を持たない口承社会が異人の支配により激変し、強制労働,徴兵の苛烈な時代を経る。やがて抵抗のうねりが生じ,異人が去った後の社会に至る。著者は百年の孤独からインスピレーションを得たという。スケールの壮大さはそれに匹敵する。しかし,本作の主人公は思索の人で,既存社会、異人の支配の中、常に葛藤し傷つきながら自らの道を模索しており,その姿に強い感銘を受ける。壮大かつ繊細で,物語としても,内面を描いた文学としても素晴らしい。巡り会えたことに感謝。

2016/07/20

スミス市松

アフリカ近代化の波に翻弄される破壊の呪術師マンダラ・マンクンクの生涯を通して、伝統的社会の因習とヨーロッパ人の到来によるその崩壊、植民地支配と独立の過程が朗らかな文体で語られる。際立った技巧性は少ないがコンゴ地域における神話的世界観から近代的世界観への変遷が見事に凝縮されており、チュツオーラやアチェベの作品と並んでアフリカ文学の入門としておすすめである。また、民話のオマージュや歴史小説、抵抗文学の形態に終始せず、人の操る《力》の普遍性と開かれた未来まで描いているところにフィクションとしての好感が持てる。

2019/03/25

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