弥勒世(みるくゆー) 下
弥勒世(みるくゆー) 下 / 感想・レビュー
えみ
堕ちた。悪魔にさえ背を向けられ、死神にも見放された孤独な男の救いようのない絶望…読者は業火に巻かれた彼の灰を集めることでしか、きっと完結できない。施政権返還が合意に達した沖縄。米軍支配下から抜け出し、安定、平和、希望のある未来を期待していた人々。しかし突き付けられた現実は全てを打ち砕くものだった…。アメリカの罪、日本の罪、沖縄の罪。混沌に支配され、嘆きは怒りに、怒りは暴力に。憤怒は何を生み出すのか。単行本の上下巻1200頁の重量は内容の重さと比例して、沖縄歴史の重さに導かれる。心に留めておくには重すぎる。
2020/08/10
ねこまんま
なんとも馳星周らしい、絶望感あふれる作品です。 生い立ちが不幸なゆえに、憎悪と怒りを膨らませ、人を怨み、社会を憎み、世の中を壊すべく、テロに走ってしまう、アウトローな男のお話。 特に下巻は狂気にさいなまれた主人公が爆走して、息つく暇もないほどの展開。 沖縄返還の歴史とそれに伴う歪については知らないことも多かった。 うちなーんちゅは日本返還を望んでいたんだろうか?
2016/04/12
James Hayashi
強姦、強奪、殺人など蹂躙されるウチナーンチュの姿に涙した。血湧き肉躍る復讐劇。感動、無力、やるせなさ、共鳴、愛。世界最強を誇る米国軍隊に徒手空拳でたち望む。ある意味、治外法権な沖縄で繰り返された悲劇。そこに著者の得意なノワールを載せストーリーに厚みがある。若き美しき女性を血祭りにあげられ、憤る主人公の生き方は革命戦士。沖縄人の心に触れることができたと感じる大作。カバーのデザインがウチナーンチュと沖縄米軍基地を隔てている金網のようでまさしくストーリーを表し秀逸。本作も本年度ベスト10に入ると思われる。
2016/01/19
nyangle
腰が痛くて読書くらいしかやれることがなかったものだから一気に読んでしまった。下巻の興味は主に2つ。世界に罅(ひび)を入れられるのか? 尚友と仁美の仲はどうなるのか? どちらもうまくはいかないだろうなと思いつつも、うまくいくといいなと願いながら読んでしまう。で、悲しい気持ちに。尚友よ、きみはどんだけ悲しいふりむんなんだ! 切なくて、なんともやるせない読後感。薩摩、大和、アメリカーに支配されてきた沖縄の歴史を突きつけられたかのような、いくぶん大げさな気持ち。小説世界にどっぷりと浸かりたい方におすすめの力作。
2020/08/22
吉田 光貴
返還直前の沖縄の状況が丹念に取材されていて長い作品ではあるが興味深く読み進められた。主人公達の行為を肯定はしないが物語が進むに連れ感情移入度が高まっていく。アツイ作品です。
2015/10/13
感想・レビューをもっと見る