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天頂より少し下って

天頂より少し下って

天頂より少し下って

作家
川上弘美
出版社
小学館
発売日
2011-05-23
ISBN
9784093863049
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天頂より少し下って / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

表題作を含む7つの短篇を収録。ここにあるのはいずれも基本的にはリアリズムの系統に属するもの。巻頭の「一実ちゃんのこと」だけは、ちょっと人を食った話だけど。10代の終りから40代後半の、いずれも女性が主人公の物語だ。相手も含めてみんなそれぞれに現実の社会生活とは、ほんの少しだけズレていたり、違和を感じていたりする。今回の作品は、おそらく男性の読者よりも、女性の読者のために書かれているという印象を受ける。もちろん、男性読者を排除するものではないが、それでも作家は自分を含めた女性の存在を見つめているようだ。

2014/02/05

nico🐬波待ち中

物事を考える時、人はとかく難しく考えすぎる。そんな我々に、もうちょっと肩の力を抜いてみたら、と川上さんから諭されたような、ふんわり軟らかな短編集。『夜のドライブ』と表題作が良かった。年老いた母と娘の二人っきりの夜のドライブや、成人した息子と母が夜中にウィスキーを静かに呑みながら互いの恋について語る様は、なんだかしみじみとしてていい。親子ってある程度年を重ねると立場が逆転するみたい。そして『金と銀』の問いかけ「女の子ってさ、突然わあっと叫んで、隣町まで駆けていったりしたくなること、ない?」私は…あった。

2018/05/11

jam

昔からハッピーエンドが嫌いだった。もとより、恋愛の成就が幸せなどとは思えない偏狭な思考の持ち主なので、恋愛のみをモチーフとした作品はあまり好みではない。作品では、日常にある寄り添いの形が余韻を持って描かれる。どの短編も、一風変わった人たちが登場するが、友や親子、そして恋人たちの関係は赦し合うという形容がぴったりだ。それはまるで私という偏った人間をも慰撫するかのよう。優しくて楽しい朝が昏い夜を包み込むかのような一冊。そして、天頂には明けの明星がひとつ。それにしても一実ちゃん、本当にクローンだったのかな。

2016/05/07

おくちゃん🍎柳緑花紅

川上ワールドにとっぷり浸りました。特別ではないけれど、普通ではない日々。7編が収められている中で、「夜のドライブ」にホロリ(最近母子ものに弱い)そしてタイトルになっている「天頂より少し下って」が好き。サッシ越しに月が見えた。天頂から少し下ったところに、月は丸く皓皓と、輝いていた。で終わる文章。私も読み終えてベランダに出た。月は天頂よりかなり下ったところに、やんわりとやわらかに光っていた。半月。本当の冬はまだまだ先でいい。

2014/10/31

うしこ@灯れ松明の火(文庫フリークさんに賛同)

「一実ちゃんのこと、ユモレスク、金と銀、エイコちゃんのしっぽ、壁を登る、夜のドライブ、天頂より少し下って」恋愛短編集全7話。穏やかな気持ちにさせてくれる恋愛小説でした。母親と二人で一泊旅行に行く「夜の」が一番好き。なかなか母親と一緒に旅行する機会はありませんが、そういう機会があれば主人公と同じように寂しいような何とも表現しがたい気持ちになるのかなと思いました。綾子さんは時折困っている人を家にしばらくの間住まわせた「壁を」は、真実はどうであれいつまでも三人の生活が続いて欲しいなと思いました。★★★

2012/08/20

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