なぎさホテル
ジャンル
なぎさホテル / 感想・レビュー
おしゃべりメガネ
読メのレビューをみて手にとりましたが、ココロにスッと染み渡る素晴らしい作品でした。作者さんの自伝的随想からなる15編で、作者さんの無名時代から「伊集院」さんになるまで過ごしたホテルでの暮らしを中心に描かれています。ホテルでの暮らしに7年という歳月をかけていますが、とにかく人格者である「支配人」と「副支配人」そして、そこで働く従業員さんの人柄あってこその成り立ちだと思います。海を見ながらの生活に安らぎを感じる描写が、なんとも穏やかで決して派手さはありませんが、ココロが落ち着く素晴らしい一冊になりました。
2019/06/16
さと
いいなぁ、伊集院氏の世界。文章の確立は論理的にではなく、生理的なものなのでは と述べる。彼の作品が読むというより感じる といった方がしっくりくるのも頷ける。アイデンティティも不確かなまま流れに身を任せ、そこに生きる人たちによって、伊集院静が掘り起こされてきた気がする。心のままに生きる彼の黎明期に立合った感あり。
2016/06/25
ミーコ
伊集院さんの作品は何冊か読んでいるのですが 売れるまでにこんな過去が有ったなんて知りませんでした。なぎさホテルで過ごした7年があるから 良い作品を生む作家さんになられたのですね。支配人さんとの出会いがあったから立ち直れた・・・ 人格者だった支配人さんと、皇居御用達の なぎさホテルが輝いて見えます。夏目雅子さんとのなれそめも初めて知りました。また伊集院さんの作品を読んでみたくなりました。
2019/03/05
nonpono
20代、文春のエッセイが大好きで、鎌倉を観光がてら、本書に出てくるK寿司の前を通ったことがある。妙にドキドキした気分に浸った。今の時代なら、Google先生のお知恵を拝借し、なぎさホテルの跡地も訪ねただろうか。エッセイのファンにおなじみの逗子なぎさホテルが一冊の本にまとまる。嬉しいかぎりである。やはりI支配人はすてきな大人だし、船を見に行く話も好きだし、懐かしい。リアルタイムでは東京で読んでいたわたしが、今、雪国でこたつで愛犬と密着しながら読んでいると聞いたら驚くかな。一つの本を間にしたわたしの流転を。
2023/12/23
がいむ
伊集院静の自叙伝的小説、というか随筆。身近な人を亡くしているせいか、淡々と描かれていながらも怒りや哀しみ、余韻のようなもの感じる作品。逗子なぎさホテルに住んでいた7年間。なぎさホテルの人たちとの交流には心があたたまります。「あなた何をやったって大丈夫。」と見守るI支配人。そんなにのんびりできた時代ではなかったはずだけど、きっと放っておけないような伊集院さんの人間的魅力なのでしょうね。敵も多いが味方も多い。夏目雅子さんについて触れた短い文に切なくなります。
2012/10/26
感想・レビューをもっと見る