サラバ! (下)
サラバ! (下) / 感想・レビュー
ヴェネツィア
上下巻、計733ページを一気に読ませる力量はたいしたものだと思う。ただ、ひたすらに上昇気運にあった上巻に比べると、この下巻はどうしても下降気味であることは否めない。「サラバ!」が生き生きと描かれるのも上巻だ。もっとも上下巻で、いわば合わせ鏡のような構造を持っているのだと言えなくもないが。第5章「残酷な未来」は、まさかの暗転。そこから終章に向けては、やや長い道程の「死と再生」の物語だ。そして、最後は小説を書くことによって、自らの「失われた時」を生き直すといった、プルーストを意識した(?)予定調和に結実する。
2016/07/28
starbro
猛烈な女性陣に翻弄されながら歩む男のクロニクル!阪神大震災、オウム、9.11、ジャスミン革命、3.11と大事件の中で、物語は展開して行きます。上下巻700P超の長編ながら良い意味で想定外の展開で一気に読了しました。西加奈子の一つの到達点の作品だと思います。自身が強烈なキャラの女性なので、それの影響を受ける男性の気持ちが理解できるのかな?
2014/11/12
遥かなる想い
最後は涙が止まらなかった。壮大な家族のよい話だった…軽快なタッチの上巻から一転、下巻は1995年の神戸大震災 から始まる。崩壊した 家族とは裏腹に、歩君の 東京での学生生活は まさに青春であり、なぜか 懐かしい。怠惰であった あの日々を、だからこそ 尊い日々として思い出すの だろうか。 そして、月日は流れ、 歳をとり、歩が 見たものは何だったのか。知ったものは何だったのか。父と母と姉と友達と …上巻からのさりげない布石が 見事に最後に結実する、 そんな物語だった。
2015/03/25
風眠
1995年の阪神淡路大震災から始まり、歩の大学時代~30代までが描かれた下巻。上手くいきまくりの歩の人生は、家族の完全崩壊、恋人の裏切り、尊敬していた親友の意外な転身、散々振り回された姉に諭され、実は何も見えていなかった歩の自我は崩れ去った。そもそも普通って何?真実って何?最終章の『あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。』で、その答えが用意されている。ニーナ・シモンは唄う「新しい世界が始まる、最高の気分よ」と。信じるものを見つけた歩は歩き出す。左足から踏み出す。これから始まる瞬間に向かって。
2015/01/13
ミカママ
これは歩の喪失と再生(途中)の物語、なのかな。かわいいんだけど、イマイチ甘ったれた彼に感情移入できなかった自分がいた。いちばん寄り添えたのは、彼の父親。これはちょっと感想書けないくらい。ラストの再会は劇的、タイトルの重みがのしかかってきます。私自身、これまで欲しいものを次々手に入れては飽きる、放り出す、の繰り返し。本当に大切なものだけを信じていかなければ、と思わせてくれたこの作品に感謝。
2016/02/14
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