ぼくの死体をよろしくたのむ
ぼくの死体をよろしくたのむ / 感想・レビュー
ヴェネツィア
2016年に刊行された『大きな鳥にさらわれないよう』で、作風が大変貌を遂げ、新たな境地に向かうのかと思われたのだが、その翌年の本書ではまた以前のスタイルに戻ったようだ。本書は18の掌編から成る小説集。分量的なものもあるが、総じていえば軽妙洒脱な「うそばなし」群である。何か不思議な感が漂うのも概ねこれまで通りのスタイルか。大半は雑誌「クウネル」の連載だが、そのせいもあってか、エッセイ風の筆致による小説ばかりである。篇中でどれを採るかは意見が分かれそうだが、私はしいていえば「二百十日」か。
2020/08/27
starbro
川上弘美は、新作中心に読んでいる作家です。少し風変りな人々の少し風変りな物語18編、川上弘美の絶妙の良い味が沁みています。18編のタイトルも好い感じですが、オススメは「鍵」、「お金は大切」、「土曜日には映画を見に」の3編です。これだけ恋愛しない人、結婚しない人が増えていると、想像出来ない愛の型が出て来るのかも知れません。
2017/03/25
❁かな❁
川上弘美さんのこういう短編集が本当に大好きなんだなぁと改めて思った♡確固とした関係にとらわれない少し奇妙でふわふわした18のお話*いろんなジャンルのお話でどれも魅力的♡「鍵」と「銀座午後二時〜」のリンクも嬉しい♡小人さんが出てくるのも川上さんらしい*七生も気になるー!「なくしたものは」の視点がどんどん変わるのも楽しい♫「バタフライ・エフェクト」も素敵♡何だか懐かしく不思議な世界観を柔らかく穏やかな文章で優しく紡がれる。川上弘美さん好きな方にはとても楽しめる素敵な珠玉の短編集♡全部好きだけど特にお気に入りは
2018/01/16
風眠
例えば、落とし物を探しているように見える男女。例えば、姉妹のような母娘のように見えるふたりが何かを話している。例えば、どこにでもいそうな恋人同士のように見える男女の一夜。よくある場面、日常にありふれた光景。でも「ように見える」だけであって、フォーカスしてみると、私には想像もつかないようなドラマが展開されているかもしれない。小さい人も、魔法使いも、時間軸の交錯も、名付けられない関係も在るのだ。ありふれた日常の中に紛れた存在だから、気にも留めないだけで。人生に常というものは無い。無常だからこそ、愛おしい日々。
2017/05/01
ケンイチミズバ
もらったものが鍵であるだけにやはり気になる。何の鍵?それ以前にあなたはなぜ告白せずに関係を維持することを大事にするの?あの人はいなくなって鍵だけが残って、すごく面白いしわかるけど。安いだけの理由で同じアパートに住む人とあまりお近づきにはなりたくないな。私も気弱な彼みたいに苦手な状態でまで気を使うのは嫌だ。慶太と静香がスゴく素敵。スペアの存在。大切な人の代用品としての存在の苦しさ、我慢と破壊に向く心が凝縮されている。草太の代用品だった兄妹の会話が心に響きます。雨音みたいにしんみりと。この短編は全部好きだ。
2017/03/21
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