覇王の轍
覇王の轍 / 感想・レビュー
青乃108号
50年前に「覇王」田中角栄(仮名)が引いた日本全土新幹線延伸という轍に嵌まった既得権益者は無尽蔵に吸い取り放題な利権にウハウハで、目障りとなる異分子は文字通り抹殺してでも自らの立場を守り抜く。そんな中敢然と立ち向かうキャリア官僚、樫山順子。巨大権力と彼女の息詰まる戦いは息詰まりはするもののイマイチ盛り上がりに欠けるというか見せ場が少いというかさすがに461ページはちょっと長過ぎるというか。最後に一矢報いはするものの、ここまで来たなら巨悪は完膚なきまで叩きのめすところまで描いて欲しかったというか。
2023/05/19
いつでも母さん
〈この国で一番悪い仕組みは、一度決めたら中断はおろか、後戻りすることが一切許されないことだ〉常々感じていることを、相場さんが本作で指摘する。既得権益・利益誘導、そして集票の道具として、あれやこれや頭に浮かばないか?50年前の遺物が連綿と続いてこの国はどうだ?人の命を何だ思ってるんだと憤る私を嘲笑うというか、鼻にもかけないんだろうなぁ‥偉いと勘違いしている野郎達は(怒)読み応えのある相場さんの新作を「樫山、頑張れ!」とエールを送り読了した。それにしても、伊藤!お前・・
2023/03/13
しんたろー
相場さんの新作は、田川シリーズで相棒を務めた樫山順子を主人公に北海道を舞台にした社会派サスペンス…何でもない贈収賄事件と事故として葬られていた不審死を追った順子が、整備新幹線の工事に絡んだ巨悪を暴いてゆく展開。JRの厳しい現状と、ありえそうな政官癒着を著者らしい筆致で問題提起していて惹き込まれた。樫山のキャラが若干弱い分『ナンバー』シリーズの小堀とタッグを組ませているのと、相棒になる伊藤の存在が面白くて、主役の不足部分を補っていた。苦味ある結末も現実的で悪くなく、色々と考えさせられる意義ある作品だと思う。
2023/04/15
reo
整備新幹線計画とは、遍く日本国中に新幹線の恩恵を国民に享受してもらう事業だと思っていた。確かに決定当時はその意味も多少はあっただろうが、今では既に不要とされている路線であっても、政治家と役人の票蔓金蔓として粛々と工程はこなされてゆく。で、北海道新幹線をめぐる死亡事故をベースに北海道警捜査二課長に着任したキャリア警官の樫山順子警視が、公務員の贈収賄事件を指揮しながらも、国交省技官の転落死事件を捜査し、やがて隠蔽された事実を暴き出す社会派ミステリ小説。これは相当に面白い‼相場ファンならずとも必読の価値あり。
2023/07/07
ナミのママ
田川信一シリーズのスピンオフ、主人公は警察キャリアの樫山順子警視。異動先の北海道警のニ課では道内公立病院の贈収賄事件捜査が進んでいた。何かと問題がある道警察、小さな転落事故の不審から始まる樫山の疑問。運転手の伊藤巡査長、地元新聞記者の木下を巻き込んで水面下での捜査はとんでもない大事件に発展していく。さすが相場作品はスケールが大きい。こんな事があって欲しくない、でもあるかもしれないと思わせる筆力。最後、国の悪どさをもっと底意地悪く読みたかった気もするけれど。面白かったです!
2023/02/07
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