短歌という爆弾: 今すぐ歌人になりたいあなたのために
短歌という爆弾: 今すぐ歌人になりたいあなたのために / 感想・レビュー
ヴェネツィア
副題に―今すぐ歌人になりたいあなたのために―とあるが、これはもう全くの本気。いつもの穂村弘のエッセイとは違って本書は真剣に真面目に(彼のエッセイが不真面目だというのではないが)短歌を志す初心者のために書かれている。レッスンにはじまって発表の場や方法、そして具体例に即しての短歌作法講義が展開されて行く。これを読めば、誰もが今日から歌人になれるだろう。ただし、才能に恵まれ努力を傾ければだが。作例を見ると、プロの歌人のそれとアマチュアの歌との階梯は歴然としている。ここまで懇切丁寧なのだが、実は道は遠いのだ。
2014/01/01
パフちゃん@かのん変更
短歌が人を感動させるために必要な要素のうち一つは共感「その気持ちわかる」というもの。もう一つは驚異「いままで見たことがない、なんて不思議なんだ」という驚き。歌作りには「入力」と「出力」がある。入力は外界を感受すること。出力は感受したものを実際に言葉で表現すること。それまでに誰も考えなかったような、自分だけの呪文を意識して歌を作る。
2015/12/16
太田青磁
要はオートマティックっていうのは自分で書いてるつもりでも実は何かに書かされてる言葉なのでよくない・一行で作品の全体を示すことができる短歌がきわめてネット向きの表現であることに気づく・短歌のように小さな詩型に関わる場合、それだからこそ非常に真剣に取り組まないと意味がなくなるということを全員が理解している・短歌が人を感動させるために必要な要素のうちで、大きなものが二つあると思う。それは共感と驚異である・どれほど突飛でフィクショナルな内容であっても、定型に盛られている限り、それは自然に私に属するものとみなされる
2014/12/07
fishdeleuze
短歌爆弾の製造方法であり、穂村の世界へのラブレターだ。本書の一番の核は構造図と題された短歌のクリティークである。短歌の短歌性を衝撃と感動であるとし様々な角度から論じている。とりわけ短歌の定形空間の内部では生身の私の神経症的な自意識が和らぎ、『〈私〉が(分裂せず)補強』されると論じており興味深かった。これと呼応して、終章において、世界に対する違和感、その世界と戦う武器としての短歌、そして世界に受け入れてもらうための短歌という告白を聞いたような文章を読んで、穂村=短歌の関係になんだか泣きそうになった。
2017/03/08
hamham
「帯、誰に書いてもらう?」「……おおしまゆみこ」「大島弓子!!!!」「あ~、ごめん(怯えている)」「いいよ、それ!大島さんに頼もう」「うん!(急に元気になって)」二章のヘタレほむらひろしに油断していたら、三章で爆弾が爆発した。二章のほむらひろしと三章で高い視点で短歌を解説する穂村弘は別人だ。そうか、短歌にはシンパシーとワンダーが必要なのか。そうか、過剰な自意識は脆弱な自我から生まれるのか。そうか、善意は世界の半分なんだ。そうか、短歌は難しい。でももう一度一章に戻れば、歌を詠む勇気が湧いてくる。そんな本。
2014/08/15
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