大審問官スターリン
大審問官スターリン / 感想・レビュー
傘緑
スターリン期の苛烈な(事後)検閲に関して、著者は余談のような形でタルコフスキー『鏡』の一節を引く。「印刷所に勤める主人公の母親が降りしきる雨のなか血相を変えて職場に急ぐシーンがある…友人に自分が勘違いした誤植について耳打ちすると、二人は同時に噴き出す…誤植とは、おそらく、『スターリン』と『スラーリン』の一字違いにあったにちがいない、と。ちなみに『スラーリン』とは、『スラーチ』すなわち『糞をする』を連想させる」今まで見過ごしていたが『鏡』のこのシーンはスターリン時代の検閲を知らないと味わえないシーンなのかも
2017/06/16
の
スターリンと芸術家達の間を想像しスターリンの深層心理に迫る本。グルジア人である彼がソ連の最高指導者になれたのはレーニンに対抗し完全な国家システムを作り上げようとする確固たる意志とそれを遂行する為に反思想を徹底的に排除する粛清の敢行だった。この理論だとロシア・アバンギャルドで隆盛を極めていた芸術家達を「資本主義的思想の反共産団体」として最初に標的としたのも理解しやすい。地下組織団体出身であったことやスターリン支持者で構成された政治システムであることで偏執病も加速したのだろう。第二のスターリンが出ないことを。
2011/08/23
INTERNATIONAL
スターリンについてはその築き上げた独裁体制のみならず、捻じ曲がった個性によりスターリン個人に対しても大きく関心が寄せられるが、「完全への妄執」という見解は秀逸だと感じた。即ち、「完全への猛執は結局のところ他者の完全な喪失と重なりあう」ことになる。スターリン以外誰も安全ではないのは当然だった。もし安全であろうとしたら自らスターリンになるしかない。
2009/09/25
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