マイホーム山谷
マイホーム山谷 / 感想・レビュー
どんぐり
山谷でホームレスや死を待つ人たちのためのホスピス「きぼうのいえ」が設立されたのは2002年のことだ。一時マスコミでも取り上げられ、その活動はよく知られている。設立者は山本夫妻だったが、妻の美恵さんが2011年に出奔し、夫の雅基さんのほうは現在、アルコール依存と統合失調症を患い、生活保護を受けながら山谷でひとり暮らしをいている。二人にいったい何があったのか、週刊誌の曝露記事めいた話には驚いたが、20年前のあの美恵さんが健在でいることがわかってよかった。「つわものどもが夢の跡」のように走り抜けた二人だった。
2022/07/15
けんとまん1007
何と切ない。ただ、切ない・息苦しいだけで終わらないものが残る。今のこの国が、敢えて捨てようとしている人たちの生きる可能性が、ここにある。それは、よそ者を受け入れる土壌があるから。よそ者・外から来たからこその視点・思考・感性がある。そこに可能性を見出すことを忘れない。
2022/08/02
ネギっ子gen
息苦しい読書になった……。映画やテレビで脚光を浴びていた山本氏は、「きぼうのいえ」施設長を解任されていた――。現在、山谷で介護を受け、生活保護を受給しながら暮らす。そして「山谷のマザー・テレサ」と呼ばれた妻・美恵さんは、あの『プロフェッショナル』放送翌日に姿を消している。山本氏は、なぜ介護を受ける立場になり、なぜ美恵さんは出て行ったのか? 介護ジャーナリストが体当り取材をして、その謎に迫った力作。山本氏の言葉。「究極の福祉って、援助する側とされる側がファミリーになる事だと思うけど、やっぱり難しい」と……⇒
2022/07/21
がらくたどん
山谷でケア拠点を創設した山本氏の今を追ったルポ。今日心身共に健康で社会に適応できている人が明日も同じように健康でいられるというのは便利で心地よい幻想だと思っている。だから山本氏がケアされる側になった点への筆者の驚きは、自分にはむしろなぜ「そうはならない存在」と思えたのかという驚きである。ケア者を強い聖者に固定する圧は危険だ。山本氏の「今」は、創設した柔軟で多職種連携の拠点が住み慣れた地域の共同体の中でケアする立場とケアされる立場の反転を遺憾なく受け止めるシステムに育ったことを身をもって証明してくれている。
2022/08/30
kou
なかなか壮絶なドキュメンタリー。読んでいて苦しくなる場面が何度もあったが、誰も悪者にしない文章に、著者の温かい人間性が滲み出ていた。この「山谷」という地域でしか成立しない福祉の仕組みは素晴らしいが、他の地域では難しいと思う。何より、ここまで愛情と情熱を兼ね揃えた人達が集まることは奇跡だと思う。「ホームレスではなくファミリーレス」って言葉は言い得て妙だと感じた。
2022/07/26
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