カルピスをつくった男 三島海雲
カルピスをつくった男 三島海雲 / 感想・レビュー
mocha
カルピス100周年。貧しい寺に生まれて大陸に渡り、モンゴルで出会った乳酸菌をカルピスという形にして日本に根付かせた男・三島海雲。明治期の人間模様はダイナミックで興味深い。「初恋の味」という斬新なコピー、ヨーロッパの画家達を対象に公募した広告図案、商品でなく企業イメージの訴求など、とても冒険的で面白い。仏教徒として「国利民福」を全うした姿勢に圧倒されるが、最期の言葉はつらかった。資料が少ない中、著者は三島の縁故を訪ね、足跡を辿って綿密に取材しているが、少々散漫で読みづらいのが残念。
2019/03/02
Willie the Wildcat
「覚行窮満」と「国利民福」が、氏の哲学。”水玉”やロゴの成り立ちなど、興味深いエピソードを読むと、世界名作劇場が脳裏に浮かぶ。振り返ると”初恋の味”って、わかるようなわからないような、これが狙いかな。一方、評伝とは言え、時勢背景などを取り除くと、主題に結びつく記述が全体の半分もないような気がする。加えて、カルピルからカルピスへの変更経緯や、78歳で社長復帰した背景が読み取れないなど、少々物足りない読後感は否めない。
2018/07/02
ゆかーん
カルピスと言えば、子供に優しい甘くて美味しい飲み物というイメージだけど、その制作には壮大なストーリーがあったことを知りました。三島海雲さんは、モンゴルの旅で出会ったジョウヒという乳酸菌を持ち帰り、研究していました。家庭を顧みず、研究や経営に没頭するストイックさが、カルピスをこの世に広める成功への道へとつながっていったんですね。モンゴルから中国、そして日本と乳酸菌のために各国を歩き回ったその努力は、彼にしか真似できない努力の賜物。今でも変わらず愛されているカルピスを、久しぶりに飲みたくなりました。
2020/01/26
fwhd8325
「銀座カンカン娘」の歌詞にも使われているように、カルピスは国民飲料的な位置づけなのに、その生い立ちなどは全く知りませんでした。古くは商店街の食料品店にはカルピスの看板があり、私たちの生活に根付いた商品と言えるでしょう。誕生は、偶然ではなく必然だったと感じました。会社としては、問題はたくさんあったようです。それでもカルピスが100年を向ける今も健在なのは本当にうれしいことです。この夏も大活躍してくれました。冬もホットでおいしいカルピス。今まで以上に親しみを感じることになりました。
2018/09/29
いちろく
モンゴルの乳製品をヒントにカルピスをつくった男について描かれたノンフィクション。巻末の多くの参考文献だけでなく著者自身が足を運び情報を集めた内容なのが、本当によく分かる。だからこそ、(前半から中盤にかけて特に)ノンフィクションよりも報告書の印象がした。主観性を極力控え、客観的に伝える事に徹した作品と捉えれば良いのかもしれないけれど、もう少し著者の主張があっても、、、と思ったのが本音。それでも、三島海雲という人物の掘り下げに徹したと受け取れば、その人柄が遺憾なく伝わる点でも、素敵な作品だと思う。
2018/09/15
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